オッジー 怪談禄

@kyoumahouooin

第1話 黒い企業の話(人コワ)


皆さん、ごきげんよう。


季節もすっかり寒くなって参りましたねぇ。

お体に変わりはないでしょうか。


昔は冬というと、あたくしの故郷なんかですと

峠は雪に塞がれて町にも出られなくなるもんですから

茅葺屋根の掘っ立て小屋の中で自分の

おじいちゃんやおばあちゃんなんかが怪談話をしてくれたんですよ。

それが唯一の娯楽だったりしましてねぇ。


そんな古き良き時代の真似事なんかをしようかと思いましてね。

色んな怪談なんかをちょこちょこ語らせて頂こうと思っております。


さて、今日の話なんですが、


これはあくまでフィクション、あたしの妄想だと思って聴いて頂きたいんですよ。


もう10年以上前の話になるんですがねぇ


あたくしは地方にある工場で勤務していたんです。


こういった工場仕事ってのは誰でも作業できるように

肉体的に無理のないように生産ラインを作るもんなんですが、

夜勤だったり、なんやかんや

それそれなりに体に負担があるような仕事の内容だったんで

寮の風呂場に行けばここが痛てぇ、あそこが痛てぇと呻き声が聞こえる

そんな環境でございました。


そうこうして、勤め始めて2年ほどたったある日

Yという新人が派遣会社から出向して来たんです。


このYちゃん、まじめで一生懸命働くし

少し人見知りな所なんかもありますが、

喋ってみると中々面白い男だったんで、ちょっとしたムードメーカーで

ありました。


ただ、Yちゃんは少しばっかり脚が昔事故にあった影響らしいですが

脚が若干変形していて悪かったのと、

障害というほどのもんじゃないらしいですが、

少しばっかり心臓が弱かったそうで、


あまりキツイ仕事は出来ないと本人は言っていたんですがね、

派遣会社から少しばっかり体に負担の掛かる仕事に派遣されてしまったんです。


だからねぇ、Yちゃんは

もう辞めたい、苦しい。

そうぼやく事が増えていったんですねぇ。


自分の派遣会社やなんかに異動願いを何度も出したそうですが、

それでも変えてもらえずに、

Yちゃんはだんだんと瘦せこけていったんですよ。


ところが、あれは11月くらいだったかなぁ。

Yちゃんが半年ばかり働いた頃。

ニコニコしていて随分と期限が良いんだ。


Yちゃん?何か良いことでもあったのかい?

と、あたくしが聞きますと


いやー、実はねぇ、辞める事にしたんだ。

少しばっかり休んだら

もう少し体に負担の無い仕事を探すよ。


と、嬉しそうに言ってたんですねぇ。


そうこうして、月末になり

いよいよYちゃんが今日で退職の日になりました。


あれはたしか夜勤明けの真夜中3時くらいかなぁ。

Yちゃんとあたしは最後に飯でも行こうか。

て、二人で深夜営業のファミレスに行ったんですよ。


そうしてちょっとした思い出話なんかしたあとに解散して


2,3日経った頃



Yちゃんから着信があったんですよ。


何かなぁ?と思い電話に出ると

知らない年配の女性の声で もしもし・・・

と聞こえるんですよぉ


あたし、一瞬混乱してしまいしてね、

もしもし?Yちゃん??

と聞き直すと


Yの母でございます。

このたび、息子が亡くなりまして、息子と

仲良くして頂いてたようで、ありがとうございました。


と、

どうやらYちゃん。


ようやく仕事を辞められる安ど感からなのか

布団の中で眠るように息を引き取っていたそうなんですね。


会社を辞めてからの話だったからなのか

突然死という事で片付いたそうで

それっきり何の話も聞かなくなりました。


いやー、我慢っていうのは、やっぱり身体に毒だったりするのかも

知れないですねぇ。



皆さんも身体にお気をつけて

お過ごしください。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オッジー 怪談禄 @kyoumahouooin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ