百合の花

那須茄子

百合の花

 君がくれた花束。

 花言葉には疎い私。


 それでも分かるのは、声にならない想いを、この花束に込めたっていうことだけ。


 声のない世界と音のこもる世界の、君と私。


 はじめての感情を、知ってしまった日から。まるで空をそのまま入れたような絵画を、なぞってひとりでいたはずの私。


 孤独を知ってしまった。

 知りたくなかったのに、手に握らされていた。


 光があれば当然、影もある。そんなありきたりなお話を、ずっと読んで期待もしていない誰かを待っていた。



「....誰?」


「ボクは一人は嫌なんだ」って。



 そっと。

 いつの間にか。


 知らない君がいて、手を繋いでいる。

 温かい体温が脈打って伝わった瞬間、あの話の続きを思い出す。



 空欄の日々を蹴散らして、どれ程の素敵なことを数えれるかな?



 声のない世界と音のこもる世界の、君と私。 


 声にならない想いを、この花束に込めたっていうことだけが、知らない世界で交わした事実。


 花言葉には疎い私。

 君がくれた花束。


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