霧の中の世界
影神
濃霧
『霧の濃い朝には家の外に出てはならない』
男1「龍神さまが出とるな。
晴れるまで暫し、待つか。」
霧の濃い朝には、龍神が地上に降り。
身体を休めて居る。
男2「いいか?
こんな日には畑にも行っちゃ駄目だぞ?」
男2の子供「どおして?」
男2の妻「龍神さまが居るからよ?」
男2の子供「どうして龍神さまが居ると、
お外に出ちゃいけないの?」
男2「そりゃ、龍神さまに食われちまうからだ。」
男2の子供「怖い、」
男2の妻「あんた。そうやって脅かせて、
また夜にトイレ行けなくなったらどうするのさ。」
男2「わりい、わりい。
トイレくらい一人で行けるよな?」
男2の子供「、、うん。」
男2の妻「大丈夫よ。
龍神さまはね?
この濃い霧で、守って下さっているのよ?」
男2の子供「イイ人?」
男2の妻「うふふ。人では無いのだけれども。
そうよ??
龍神さまは、良い神様よ。」
男2「そうだ。
こうやって、盗賊に襲われないのは。
流行り病が広がらないのは。
全て龍神さまの"おかげ"だ。」
男2の子供「龍神さまってすごいんだね?」
男2「そうだ。
まるで、父ちゃんみたいだろ?」
男2の妻「そういう事は、
もう少し稼ぎが良くなってから言うんだね。」
男2「こりゃ、困った。」
男2の子供「あははは」
人は神と共に暮らしていた。
神は人を見守り。
人は、神を崇めた。
そうして"共存"していた。
しかし。
男3「家の者が居なくなった!!
龍神に拐われたんだ!!!」
村長「、、諦めるんだ。」
男4「霧の濃い朝に出るからだよな。」
男5「龍神さまに会っちまったら、
もう、2度とは戻っては来ねえな。」
男3「くっ!!!」
男6「聞こえてるって。
行くぞ、、」
男3「村長も。村人も。
皆、龍神龍神。
ただの人攫いと、何ら。
変わりねえじゃねえか。。
くそ、、!!」
男3の妻「坊や、坊や、!??」
男3の子供「お母さん??!」
男3の妻「良かった、、」
男3の子供「お母さん!!
うわぁあああん、、」
男3の妻「あれ程。霧の濃い朝には、
"お外には出ちゃイケナイ"
って、言っただろうに。」
男3の子供「ごめんなさい、、
龍神さまに会ってみたくて。」
男3の妻「本当に、お馬鹿な子だよ、、」
「アハハハハ」
男3の子供「??
誰かが笑ってる。」
男3の妻「こらっ、
勝手に行かないで!?」
男3「あいつらが居ないなんて、、
俺は、どうしたら良いんだ、、」
男7「すっかり塞ぎ来んじまって。」
男8「無理もねえさ。
何せ、相手は神様だ。」
男9「龍神さまに拐われちまった家族は、
皆、村を棄てて出て行く。
それが、流れさね。」
男3の子供「うわぁ。」
男3の妻「これは、、」
そこには、村があった。
女1「ありゃ。あんた達も、
霧の濃い朝に出ちまったのかい。」
男3の妻「はぃ、」
子供1「こんにちは」
男3の子供「、、こんにちは」
子供2「遊ぼう??」
女2「おーい。
新しい、お客さんだよ??」
霧の中から少しずつ、人が出て来た。
男3の妻「ここは、、??」
女3「ここは、龍神さまの家。
って所かねえ??」
女1「違うよ。
うるさいのが居ない【楽園】だろ?」
女4「違いないね。」
『あははは!!』
龍神さまに拐われた村人達は、
幸せそうにそこで暮らしていた。
子供3「アハハハハ!」
男3の子供「アハハハハ!」
男7「龍神さまの祠が壊れてるぞ!!?」
男8「誰がこんな罰当たりな事を、、」
男9「村長。
どうしましょう、、?」
村長「龍神さまは、きっと。
酷くお怒りになられるだろう。。
私達に出来る事は何もない。
ただ、裁きを受けなければ、、」
時に人は。
神をも裏切り、神を冒涜する。
自ら破った【禁忌】を。
神が悪いと。
そう、責任転嫁した。
男3「こんなもんに、囚われてるからっ!
大切な家族を、喪ってもっ。
平気で、居られるんだっ!!!」
祠が壊れた次の日。
村では大雨が降った。
もしかしたら。
それは、龍神の涙だったのかも知れない。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ。
大きな地鳴りがすると、
山が動き、激しく崩れた。
村は、土砂崩れに見舞われた。
罰が、当たったのだ。
男7「おーい!!
誰か居るかー?!!!」
男5「誰かー!??
、、!??
ありゃ、男3の家の者じゃねえか??」
男7「他にも見た顔があるぞっ??」
皆は帰された。
しかし。
男10「こりゃ、駄目だな。」
神隠しに合った者は、殆どが帰って来ない。
しかし。稀に帰って来る者が居る。
神隠しに合った者が帰って来た場合。
その者達は、全員。
脱け殻の様な状態になっていると言う。
何故その様な状態になってしまうのか。
それは、定かではないが。
きっと。
彼等の世界の居場所を。
守る為。
なのかも、知れない。
霧の中の世界 影神 @kagegami
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