概要
かみさま、名前はなんというんだ?
ぴゅうと風が吹き込んで木々を揺らしている。赤い花の刺繍の着物を着た山神は小枝の上で座り遠くを見つめていた。もうこうして数年待ちわびているのに帰ってきやしない。山のふもとから嬉しそうな顔をして上がってくるのは小さな子供ばかりで待ち人は現れずだ。子供たちはりんごの頬をして山神を見上げた。『かみさま、おらんちのりんご食うか?』 頬と同じ色をしたりんごを着物の胸から取り出してむんずと掴み持ち上げる。山神はふふと笑うと指先を下に向けて置くようにと差す。『うん、またもってくるろ。』子供たちはケラケラ笑いながらまたふもとへ降りていった。山神はふわりと降りてりんごを掴む。赤い子供の頬と同じ色のりんごは甘い香りがしていつかの花を思い起こさせた。
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