第六話 パワー・ワードで「現代ファンタジー」を無双する

 おそらく、読み手が、未知の作家が書いた物の中から、読みたい作品を探す場合、より大きい文字のキャッチコピーと、比較的小さな文字で太字になっているタイトルから選んでいる事が推察されるので、そんな読み手の興味や関心を引くために、〈看板〉にいかなるワードを入れるかは、作品内容と同様に、書き手が注力すべき重要事であるように思われます。

 キャッチコピーに関しては、『カクヨム』の仕様上、三十五文字までしか書けないようになっているのですが、作品名には上限はありません。しかしながら、ランキング表に表示されるのは、タイトルの三十九文字目までで、四十字目は「…」となり、それ以降は表示されないので、作品タイトルで、未知の読者に対してアピールをしたい場合には、キーワードは、その三十九字目までにキッチリと入れておかないと、読者に全く見えなかったり、折角のキーワードが途中で見切れたりしてしまうので、この点にも注意する必要があるかもしれません。


 そして、年末から年始にかけて催された、今回のカクヨムコン9における「現代ファンタジー」部門の週間ランキング表の一ページ目に掲載されている上位九九位以内、こう言ってよければ、〈ページ・ワン〉のキャッチコピーや作品タイトルに見止められた〈三強〉キーワードが、「ダンジョン」「配信」「異世界」で、これらのワードが最低でも一つ用いられているのが〈六十五〉作品であった事は、前の「話」で確認した通りです。


 それでは、これら三強ワード以外に、「現代ファンタジー」部門のページ・ワンでは、一体どのようなワードが用いられていたのでしょうか。


 例えば、「配信」との関連で目に止まったのは、「ダンジョン」以外だと、次の二つの用語でした。


  「Vtuber」(四)「TS」(七)

 

 「Vtuber」が用いられているのは四作品で、そのうち、「ダンジョン」や「配信」といった三強のワードが同時に使われていないのは二作品でした。

 「配信」と「Vtuber」という語の関連性が高いのは至極当然なのですが、三強無しの場合、「Vtuber」は「TS」と関連付けられている事が多く、見た目において男女を入れ替えたアバターで配信を行う事が実際にあり得る事を鑑みると、「Vtuber」と「TS」の関連度が高いのも納得です。

 ちなみに、性転換の略語である「TS」が用いられている七作品のうち、三強のワードが無いのは三作品でした。


 また、「ダンジョン」との関連で言うと、ダンジョンで魔物を倒してゆくのが、この地を舞台とした物語の基本的な筋なので、「魔」というワードで検索を掛けてみました。


  「魔」(十四作品) 

   「魔物」(六)「魔王」(二)「悪魔」(一)

   「魔女」(一)「魔法少女」(一)

   「魔法」(五)「魔力」(三)


 〈魔〉と関連がある生物は、「魔物」「魔王」「悪魔」「魔女」や「魔法少女」で、それらが所持している力としての「魔法」や「魔力」が、この〈魔〉という語から派生しているようです。

 そして、〈魔〉の関連語が使われているのに、三強ワードが用いられていないのは七作品でした。その七作品では、「ゲーム」という用語が見止められ、おそらく、〈魔〉の力を持った人物が力を行使するのは、ダンジョン以外では、ゲーム世界が多いのかもしれません。


 そして、「ゲーム」は五作品に確認できたのですが、うち、「魔王」や「魔法」が同時使用されていないのは三つでした。


 ここで思ったのは、ダンジョンであれゲームであれ、あるいは、それ以外の現代社会と地続きとなっている何処かの場所であれ、「現代ファンタジー」において鍵となるのは、そこで活躍する人物が持つ特殊な力で、それが、〈魔〉関連だと、魔法や魔力として顕現している分けです。それでは、そういった特殊能力は、魔法以外では、どのように表記され得るのでしょうか。


  「超能力」(〇)か「異能(力)」(〇)

  「魔法」(五)「スキル」(七)


 昭和や平成の特殊能力での戦闘といえば、『バビル二世』や『幻魔大戦』のような〈超能力〉バトル、あるいは、『とあるシリーズ』のような〈異能〉バトルが想起されますが、令和においては、闘いで用いる、普通の人間の力を超えた特殊能力は、〈超能力〉や〈異能〉ではなく、「魔法」や「スキル」といった語によって表わされているようです。

 ちなみに、「スキル」という語を用いた上で、ここまで確認したいかなるキーワードも同時使用していないのは三作品なので、この令和において特殊能力を意味する「スキル」も、「異世界」や「ダンジョン」という語との親和性が極めて高いようです。


 さて、魔法であれスキルであれ、特殊能力を有する人物が、「現代ファンタジー」の物語の舞台となっている地において、他者を圧倒するのは非常に多い展開なのですが、そうした圧倒的蹂躙力を表わす「無双」は、一体どの程度用いられているのでしょうか。


  「無双」(十)


 この「無双」という語を用いつつ、ここまで確認した「配信」「ダンジョン」「ゲーム」「魔法」「スキル」といった語を同時使用していない作品は、ただの一つもなかった事を、ここで忘れずに指摘しておく事にいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る