第五話 現在の「現代ファンタジー」における三種の〈神語〉
『カクヨム』での読み手からの反応、すなわち、〈PV・ハート・星〉のうち、登録者にしかできないリアクションが〈ハート〉や〈星〉で、これに対して〈PV〉は、登録者であれ未登録者であれ、エピソードを読んでくれた読み手の足跡です。
登録・未登録の如何を問わず、読み手が、それこそ星の数ほどある未知の作品の中から、自分が読むべき作品をどのようにして選んでいるのか、というと、面白かった作品を書いたフォロワーや、既知の作家の別作品の場合を除くと、なんとなく面白〈そうな〉作品を選んでいる分けで、その選択基準となる第一印象こそが〈作品の看板〉です。
『カクヨム』では、その〈看板〉をクリックすれば、作品の最初の話を読む前に、その「概要」や「書き出し」を見る事ができる仕様になっています。とまれ、いきなり第一話を読む場合にせよ、その前に、詳細を確認するにせよ、読み手を誘導する作品の看板こそが、『作品名』と「キャッチコピー」であるように思われます。
かくして、タイトルとキャッチから見た場合、カクヨムコン9の「現代ファンタジー」部門のトレンドが「ダンジョン」である事を、この一つ前の「話」で確認しました。
読者からの反応が認められる上位三〇〇位までの「ダンジョン」というワードの使用は、三〇〇作品中、約三分の一の〈一一七〉で、上位一〇〇位にいたっては、約半数の四八作品において「ダンジョン」が使われていました。
「ダンジョン」というワードさえ入れていれば、いつもいつでも読み手に読んでもらえる保証はどこにもないけどぉ、なのは確かなのですが、少なくとも、読み手が興味を抱く作品に「ダンジョン」が用いられているのは間違いない事実です。
そして、一つ前の「話」を書いている際に、今の「現代ファンタジー」では、「ダンジョン」以外に、一体いかなるワードが多用されているのか、という疑問が湧きました。
ランキング表をざっと見ていて目に止まったのが、「配信(動画)」と「異世界」という二つのキーワードだったので、これらに、前回確認した「ダンジョン」を加えた上で、上位九九位以内のキーワードの被使用状況を確認してみる事にした次第です。
「ダンジョン」 (のべ七一) 四八作品
「配信」「動画」(のべ四八、うち動画は三) 三二作品
「異世界」 (のべ十九) 十七作品
〈内訳〉
「ダンジョン」のみ 二二作品
「配信(動画)」のみ 〇九作品
「異世界」のみ 〇七作品
「ダンジョン」と「配信(動画)」 十八作品(うち「動画」一)
「ダンジョン」と「異世界」 〇五作品
「配信」と「異世界」 〇一作品
「ダンジョン」「配信(動画)」「異世界」 〇三作品
このように見てゆくと、「ダンジョン」「配信(動画)」「異世界」という三つのパワー・ワードのいずれか一つでも入っているのは六五作品、上位百作品の約三分の二に及んでいる事が分かります。
そして、「異世界」というワードから、異世界から魔法やスキルといった異能力を行使できる力を持ったまま現代日本に戻ってきたり、あるいは、異世界と現実社会を行き来できる作中人物の物語が、今の「現代ファンタジー」の流行の一つになっている事が推察されます。
実際、書籍化、さらには、アニメ化もされている『異世界でチート能力(スキル)を手にした俺は、現実世界をも無双する ~レベルアップは人生を変えた~』や『佐々木とピーちゃん』は、こういった現代ファンタジーの一種にカテゴライズされるでしょう。別の見方をすると、こうした大ヒット作品の存在が、現代ファンタジーの「異世界」ものの多さに影響を及ぼしているのかもしれません。
さらに、単独使用も多い「ダンジョン」は、他のキーワードとの併用も多く、この事は、例えば、現実世界に突如出現した「ダンジョン」に潜って、その模様を「配信」するといった物語が、現在の〈現代ファンタジー〉におけるトレンドになっている事を示唆しているように思われます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます