知らないと謂う事を知らない
昨日の様な今日を繰り返すこの世界は、今日の様な明日を積み重ねて行く。
誰かの瞬きの速度で動くこの世界は、誰かを置き去りにして行く。
それは指を弾く音の六十五分の一の時間で忘れられてしまう。
遠くで起きる災を憂う様に。
知らぬ隣人を鼻で笑う様に。
回る事の無いメーター。
点かなくなった灯り。
溜まるポスティング。
回収される事無く溜まった、彩りどりの紙が風に煽られて空に踊る。
その中には個人名の入った再配達通知が幾つも有ったのかも知れない。
そんな物を誰が気に留めるだろうか。
振り落とした何かを。
降車した誰かを。
届かなかった想いを。
声になら無い声を。
忘れられるだけの消費を。
消費され消えて行くだけの誰かを。
気が付いていれば変わったのかも知れない。
結果は。
それでもこの世界は気にしない。
それでもこの世界は気付かない。
昨日の様な今日を繰り返し。
今日の様な明日を作って行く。
そう誰を置き去りにしたとて。
おわり。
水面を叩く光が只々眩しくて 花恋亡 @hanakona
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