結婚の約束をした幼馴染が他の男を好きになったと離れていったが、クラスのアイドルと長身バスケ美少女と隣の席のツンデレ美少女と仲良くなった僕に今更好きだと言ってきてももう遅い!

あんぜ

『僕の彼女は押しに弱い』スピンオフ

由子よしこちゃん! 由子ちゃんってば!」



 僕の名前は柏木 祐希かしわぎ ゆうき

 僕には幼い頃、結婚の約束をした幼馴染がいた。


「ユウくん、おおきくなったらけっこんしようね!」


 彼女の名前は成見 由子なるみ よしこ


「うん。よしこちゃんはぼくのおよめさん!」


 いつの日か、彼女とは一緒になる。そう信じていた。



「なるちゃんって呼んでって言ったでしょ!」


 彼女は地味だけど前髪を上げるとめちゃくちゃかわいい。

 ぱっちりとした二重の目、柔らかい印象のぽてっとした眉、ちょっと広めのおでこ。鼻は高くないけれど目や眉とセットだと、とっても可愛らしい。背は平均くらい。ただ、僕も平均くらいだから丁度いい。あまり高いとこっちが格好悪いし。小学校からの友達も地味な女の子が多かった。


 それが、中学に入ってからの彼女は前髪を寄せて留めるようになり、眉を細く手入れし、身だしなみに気を遣うようになった。名前も由子という、周りと比べると地味な名前が好きじゃなかったらしく、なるちゃん――と呼ばせるようになっていた。


 それに比べて僕は相変わらず地味なまま。目立ったり、注目されるのが好きじゃないし、顔がよくないのも知っていた。女の子と目が合うと顔を逸らされるのが嫌で前髪を長くしていた。身だしなみも、妹にだらしないとはよく言われていたけれど、直すつもりもなかった。


 ただ、それで成見なるとの関係が壊れるようなことは無かった。彼女がちょっぴり内気なところは相変わらずだったし、砕けた喋り方をする男は僕だけ、何より家が隣だからいつでも会いに行けるし、成見だってよく遊びに来ていた。


 ――そう信じていた。



「私、好きな人ができたんだ!」


 寝耳に水とはこのことだ。

 高校一年の文化祭、彼女はクラスの出し物、演劇をやっていた進学クラスの主役に恋をした。


 その日から成見は僕の家には遊びに来なくなった。



 ◇◇◇◇◇



「おにい、由子ちゃん最近来ないけど何かあったの?……喧嘩でもした?」


 ムフフ――と揶揄うようにひとつ下の妹、しずくが聞いてくる。


「別に……」

「えっ、ホントに喧嘩? どうして? あんなに仲が良かったのに!」



 ◇◇◇◇◇



「お兄……、由子ちゃん、好きな人ができたって…………何よそれ。由子ちゃんなんか嫌い……」


 翌日、成見と姉妹のように仲の良かった雫が泣きそうな顔で言ってきた。

 本人に直接聞いていたようだった。



 ◇◇◇◇◇



 成見が離れていってから、僕は家に帰ると遅い時間までネットをやるようになった。

 学校には友達の少ない僕だったが、ネットにはゲーム友達がいた。


『聞いたぞYOUユウ、お前彼女をNTRねとられたって?』

『違う違う、これはBSSぼくがさきにすきだったのに。だって告白前だったんだろ?』


としては付き合ってるつもりだった。部屋にいつも来てたし』


『マジかよ、NTRじゃん』

『つもりだけならわかんねーだろ』


 そんな感じだったが、会話のできる相手がいるだけでも今は良かった。



 ◇◇◇◇◇



「きゃっ」

「おっと!」


 廊下で友達とふざけあっていた女の子がぶつかってきたのは、ちょうどそんな感じで落ち込んだまま、長く過ごしたあとだった。寝不足の僕は上手く彼女を受け止められなかったのもあって、彼女の下敷きに。


ゆい! 大丈夫!?」

「唯のお尻に触んな!」

「唯、早く離れて離れて!」


 唯――と呼ばれた彼女はクラスのトップカースト。アイドル的存在の美少女、小鳥遊 唯たかなし ゆいだった。


「ごっ、ごめんね! 痛かったよね」


 小鳥遊は慌てて僕から離れる。クラスのカースト底辺の男になんて触れていたくは無いだろう。


「や、別に……」


 そうは言ったものの、起き上がるとちょっとだけ足を捻ったみたいなのがわかる。

 僕はそれを悟られないよう、足早に立ち去ろうとした。


「唯が謝ってるのにその態度はないでしょ!」

恵子けいこ! こっちが悪いんだから――ちょっと待って。柏木くん、足痛めたの?」


 まさか小鳥遊が僕の名を知っているとは思わなかったので足を止めてしまう。


「や……」

「保健室に行こう。肩に掴まっていいから、ほら!」


 小鳥遊に腕を強引に取られ、僕は保健室へと連れていかれた。



 ◇◇◇◇◇



「柏木くんってよく見たらカワイイ顔してるよね。あと結構筋肉ある?」


 小鳥遊はまだ保健室に居た。養護教諭の東條先生は――軽い捻挫だから大丈夫ですよ――と言っていたのだが、小鳥遊が自分のせいだからと湿布に包帯までしてくれていた。彼女は前髪を長くしていた僕を下から仰ぎ見て、そんなことを言ってきたのだ。


「ゆ、夕方、走ったり、筋トレとか……してる」


 中学の頃はバスケをやっていた。僕みたいなのが目立つと周りのイケメンのファンたちからブーイングが飛ぶから地味なプレイに徹していたけれど。高校では部活をやめたが、ボールには触っていたし、体も鍛えていた。


「そっかー。髪、切った方がいいかもね。モテると思うよ?」


 フフッ――と悪戯っぽく笑う小鳥遊を見て、僕も久しぶりに笑顔になれた気がした。



 ◇◇◇◇◇



 週末、僕は悩んだが、小鳥遊の言葉が少しだけ嬉しかったのもあって、雫に相談して美容室というものに初めて行った。雫はかっこいいと言ってくれるけれど、僕は自分の顔はそこまで良いとは思っていないのもあって自信が持てない。ただ――。


「柏木くん、思った通りだ。やっぱり髪を切った方がいいね」


 朝の教室、周りがチラチラと僕の方を見るだけで近寄ってこない中、小鳥遊が挨拶と共に声をかけてきたんだ。


 その日から、小鳥遊は僕にたびたび話しかけてきてくれるようになった。

 初めて学校での楽しみができた。ただ、その代わりに…………弊害もあった。



 ビタッ――体育用具室の冷たい床に僕は転ばされた。


「柏木の分際で唯ちゃんに馴れ馴れしくしてんじゃねえよ!」


 体育の後の昼放課に、クラスの男が隣のクラスのガラの悪い男の手を借りて、僕を用具室に放り込んだのだ。どうやら彼らは最近僕が小鳥遊と話をしていることが気に食わないらしい。小突かれたりしてたので殴り返しても良かったが、こんなくだらないことで揉め事を起こすのも嫌だった。


 ヤツらは用具室の戸を閉めると鍵をかけた。


『閉めても中から開けられるんじゃねーのか?』

『いや、ここの内鍵、壊れてるんで』


 そんな会話と共に外の連中は去って行った。

 実際、内鍵のノブを回しても空回りして鍵は開かなかった。


 こんなイジメは中学の時にもあったので、慣れていたから気にもしなかった。それに、どうせまだこの時間だ。体育か部活の時間になれば、ここのボールが必要になって誰かが開けるだろう。積まれていた跳び箱の上に飛び乗って座る。


「きゃっ」


 悲鳴が聞こえた。

 跳び箱の裏を覗き込むと、女の子が屈んでいた。


「えっ……と」

「ご、ごめんなさい……盗み聞きしてたわけじゃ……」


「や、いいけどさ。なんか……びしょ濡れ?」

「これは、その……」


 事情を聞くと、体育の授業の後、クラスメイトに体育館の更衣室に連れ込まれ、ふざけてシャワーをかけられたらしい。体育館の更衣室は部活の生徒が使えるようにシャワーがついている。びしょ濡れで恥ずかしくて乾くまでと、ここに隠れていたらしい。ただ、目を赤く腫らしていて泣いた様子があった。


「イジメ?」


 彼女は答えなかった。

 僕は長袖の上着を脱いで渡す。


「――跳び箱の向こうで他所を向いてるから、上、着替えれば?」


 僕が降りて跳び箱を背に座り、しばらくすると、彼女が着替え始めたのかジッパーの音が聞こえた。



「ありがとう」


 跳び箱の向こう側から僕のジャージを着て出てきたのは背の高いポニーテールの美少女だった。彼女は隣のクラスの三桜 彩音みさくら あやねと名乗った。三桜は僕の隣に膝を抱えて座った。


「そのうち誰かが開けるとは思うけど……」

「……バスケやってるんだ、私」


 唐突に語り始めた三桜は、じっと床を見つめていた。

 僕は何と返事をすることも無く黙っていた。


「――これでも中学の時はそれなりに上手だったし、高校でもイケるって思ってたんだ」


「――でも、練習中に接触して先輩にケガさせちゃって、先輩は気にしなくていいって言ってくれたんだけど……やっぱり試合に影響しちゃって……」


 三桜は震えていた。僕はそんな三桜が放っておけず、思わず肩を抱き寄せてしまっていた。

 やってしまってから――しまった――と思ったが、意外にも三桜は僕の方へ身を寄せてきた。悲しくて、誰かに寄り添ってもらいたい時はある。彼女だってそうだったのだろう。僕らは、放課後にバレー部が用具室を開けてくれるまで二人だけで居た。



 人と関わるのは苦手だったが、三桜の現状を見ていられなかった僕は、彼女がケガをさせてしまったという先輩に会いに三年生の教室を訪れた。その先輩は今はもう部にはおらず、受験勉強中だったのもあって三桜がイジメを受けていることは知らなかった。僕の話を聞いて、その先輩は後輩たちに話をつけることを約束してくれた。



 ◇◇◇◇◇



 最近、前髪を切ったせいで教室に居ると女の子とよく目が合う。

 相変わらず顔を逸らされるので僕としてはあまり気分が良くなかったが、小鳥遊がいいと言ってくれるのが嬉しくて、以前ほどは気にならなかった。


 クラスの中でも特によく目が合うのが隣の席の飛鳥 日向あすか ひなたって女の子。ただ、僕が顔を向けるとあからさまに不機嫌そうな顔をする。理由はわかる。だって彼女は運悪く、一学期から続けざまに僕の隣の席にばかり当たっていたのだから。以前から当たりは強かったのが、髪を切ったせいで視線が合うのがなおさら気に入らないらしい。


 彼女も小鳥遊と同じくクラスでは一二を争うような美少女。ただ、小鳥遊ほど人当たりは良くなく、ちょっと棘のある感じの気の強い女の子だからか男ウケは悪く、クラスの男子とはよく口論になっていた。



 その日も、飛鳥がどこかの男と口論になっていた場面に出くわした。

 コンビニの店員への態度が悪いと、飛鳥がその大人の男を注意したらしい。


 僕は――あんなの、関わらなければいいのに――と思った。


 ただ、その男が手を振り上げた瞬間、思わずその腕を掴んでしまっていた。

 腕は簡単に掴めた。もしかするとその男はただの脅しだけのつもりだったのかもしれない。――が、僕の行動はその男を逆上させてしまったのか、反対の拳で殴られてしまった。僕はそれでも手を離さなかった。店員が警察を呼ぶと声を上げると、男は強引に僕の腕を振り払って逃げていった。


「何やってんのよ、バカ!」


 飛鳥はコンビニの床に尻餅をついていた僕にそう言った。


「……だってお前、泣いてただろ」


 男と対峙する飛鳥は目に涙を溜めていたんだ。

 それを指摘すると、飛鳥はその場にへたり込んだ。

 顔を俯かせて声を堪えて涙を拭う彼女に、どうしていいか分からなかった僕は、彼女の頭を撫でてあげた。彼女は小さく――ありがと――と漏らした。



 ◇◇◇◇◇



 翌日から飛鳥は僕に話しかけてくれるようになった。

 いくらか棘のある言葉は相変わらずだったが。



「柏木ってさ、小鳥遊のことどう思う?」


 月も変わってしばらく経ったある日、飛鳥がそんなことを聞いてきた。

 小鳥遊がすごくかわいいのは確かだ。そしてこんな僕にも気安く接してくれる優しい子だ。ただ、そんなことよりも成見なるが離れていって落ち込んでいた僕に笑いかけ、学校での居場所を作るきっかけをくれた特別な女の子だった。


「……うん、すごくいい子だなって思う」


 少しだけ物思いにふけってそう返した。


「そ、そっか……」


 ただ、珍しく歯切れの悪い返事を返した飛鳥。

 不思議に思った僕は彼女の瞳を覗き込んだが、いつもの変わらぬ飛鳥だった。



 ◇◇◇◇◇



 飛鳥とその話をしてから、僕は小鳥遊のことをそれまで以上に意識してしまうようになった。小鳥遊はいつもクラスの中心に居た。女の子に囲まれて、どちらかというと男を近づけさせないように守られていたのかもしれない。教室の外でも、小鳥遊の姿を見かけると目で追ってしまっていた。


 ある日、四階の渡り廊下で小鳥遊が男の生徒と話をしていた。

 珍しく取り巻きは少し離れたところで二人を見守っていた。


「唯と相馬くん、お似合いよね」

「絵になるよね、二人」


 相馬そうま――取り巻きが話すその名前に聞き覚えがあった。雫が教えてくれた、成見が好きになったという男だ。相馬は女たらしっぽいイケメンだった。笑顔で二人が話す姿を見ていると、何故か胸の奥がモヤモヤして気分が悪かった。


「じゃあ後で家に行くね」


 相馬にそう声を掛けると、小鳥遊は取り巻きの方へ戻ってきた。

 僕は彼女と顔を合わさないよう、慌てて立ち去った。



 ◇◇◇◇◇



「相馬って知ってる?」


 教室に戻った僕は、隣の席の飛鳥に聞いてみた。


「んー、1-Aの相馬 俊和そうま としかずでしょ?」

「……よく知ってるな」


「ん、女子の間では今いちばん話題になってるから」

「……そうかよ」


「なに、嫉妬してんの? 好きな子でも取られたりした?」


 ヘヘ――と冗談めかして聞いてきた飛鳥だったが、僕は黙ってしまった。


「――え、本当なの?…………ごめん」


 柄にもなく飛鳥は申し訳なさそうに顔を俯かせていた。


「や、別にそんなことないって、ホント」


 慌てて取り繕ってそう返したけれど、少しだけ声が震えていたかもしれない。


「し、失恋したならあたしが彼女になってあげてもいいわよっ」

「え、飛鳥が? 飛鳥、僕の事好きなの?」


「す、好きなワケないじゃない! あ、あたしはただ、柏木が落ち込んでるかと思って……」

「……なんだよ、そういうのいいから。バカにすんな……」


 しおらしく顔を伏せていたから気を使ったのに……。

 その日はそのあと、飛鳥とは口も利かなかった。



 ◇◇◇◇◇



 同じ日、三桜と廊下で出会った。彼女は以前見かけたときと違って表情がずいぶんと明るくなっていた。


「柏木くん、この間はありがとね!」


 弾むような声で話しかけてくる三桜。


「ああ、うん、別に……」


 小鳥遊や飛鳥のことがあって少し声のトーンが低くなってしまったからか、少し不思議そうな表情を見せる三桜。


「それとね、あのあと先輩が部活の皆を止めてくれたんだ。その、私のアレのこと」

「そ、そっか。よかったね」


 アレ――つまりはイジメの事だろう。彼女が元気そうなのも、イジメが無くなったからなのだろう。


「まさか先輩が私の事、気にかけてくれてたなんて思わなかった」


 僕のことが伝わっていないことにどうしてか胸が痛んだ。

 別に恩を売ろうなんて思ってはいなかったのだけれど、嫌な感じがした。

 たぶん、その先輩がだったのが理由だ。


「――それで、今度のクリスマスに――」

「じゃ、じゃあ僕はこれで!」


「あ、ちょっと! 柏木くん!?」


 三桜が呼び止めるのも聞かず、早足でその場を立ち去った。



 ◇◇◇◇◇



「ハァ…………」


 失恋したうえ、追い打ちをかけられた僕は学校を休んでいた。


『クラスのアイドルちゃんとはどうなった?』

『仲良くなったんだよな? 幼馴染ちゃんにはザマァしたか?』


 ネトゲ友達は遠慮なくそんなことを聞いてきた。


『オレの幼馴染が好きになったやつと、家に行き来するようなカンケイだった』


『きっつ! マルチNTRエンドか!』

『寝てるとは限らないんだろ?』


『家に行くような関係なら寝てるだろjk』

『でもYOUユウは幼馴染と寝てなかっただろ?』


『うるせえ、あんなのと一緒にすんな!』


 そんな感じで結局、僕は終業式までの一週間を丸々休んだ。

 そして冬休み。


 ――成見なるが来た。



 ◇◇◇◇◇



「……なんだよ、相馬とはいいのかよ……こんなとこに来て、誤解されるぞ」


 部屋に入ってきた成見なるは顔をしかめていた。


「くっさい! この部屋、閉め切ってて臭いが篭ってるよ。お母さんが心配してるからクリスマスも誘ったのに。部屋に篭ってばっかで!」

「やめろ、寒い! 何月だと思ってんだ!」


 成見は部屋の窓を開けやがった。


「正月よ! 知ってるわよ! だからあんたを誘いに来たんでしょ!」

「じゃあ相馬を誘えばいいだろ」


「そ、相馬くんは…………そもそも振られたし、恋人でも何でもないし…………なんかもう飽きた! 飽きたからあんたのとこに戻ってあげる!」

「えっ…………」


 あれからずいぶん経つ。成見はもう相馬のになったものとばかり思っていた。なんだ、振られたのか――そう思うとちょっとだけ顔が緩んでしまいそうだった。


「――も、もう遅い、オレはもう誰も好きにはならない……」


 ネトゲの友達には幼馴染にザマァしてやれと教わっていた。――もう遅い――そう言ってやればスッキリするぞ――と言われていたのに、全くスッキリしないのはなんでだろう……。


 成見は眉をひそめていたが、やがて僕の尻を叩き、出かける準備をさせられた。


 事情を知っているような雰囲気の母に――いってらっしゃい――と声を掛けられ、僕は成見に初詣へと引っ張り出されたのだ。



 ◇◇◇◇◇



 新学期にはなったが、すぐには学校に行けなかった。僕は三日目にようやく、成見に引っ張って行かれるように学校へと向かった。久しぶりの教室は席替えがされており、隣は飛鳥の席ではなかった。あんなことがあって話し辛かったのもあって、僕にはちょうど良かった。


 教室では小鳥遊が話しかけてきたけれど、僕はその度に用がある振りをして避け、人の居ない場所に逃げた。その方が取り巻きたちも安心していたし。

 飛鳥は以前の飛鳥に戻ってしまった。僕とは関わりたくなかった頃の飛鳥に。

 三桜とは会っていない。時折姿を見かけるのだけれど、目が合わないようにしていた。


 そうやって誰にも関わらずに過ごそうと思っていたのに、成見は以前のように毎日、僕の家にやってきた。部屋に来ると窓を開けて換気をし、溜まったゴミを袋にまとめていた。洗っていない服を洗濯され、枕や布団を干された。


 成見はまた、僕の様子をしつこく聞いてきた。

 母に聞いたのだろうか、年末に何かあったのだろうと何度も聞いてきた。



 結局、僕は音を上げて、二学期の末に起こった三人の女の子とのことを話してしまった。


「呆れた! 私のこともそうだけど、あんた、告白もしないでいじけてたの?」

「……だって、告白したって上手くいかないってわかってるし……」


 そう返したら、成見はぷるぷると震え始めた。そして――。


「一歩踏み出す勇気もないのに悲劇のヒロイン気取りかよ!」


 ――何が起こったかわからなかった。成見と話していたはずの僕は、ベッドの上で仰向けに倒れていた。すごかった。僕は彼女のパンチに痺れた。


「なるのことが好きです」


 横になったまま、僕は初めての告白をした。








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 なんか書いてて何だこれってなりましたw

 私、美少女と言う表現をほとんど使わないんですよね。変な感じ。

 あと、派手な名前は脇役にしか付けないやつ。


 コメントで主人公に文句を書くのは特別にOKです。

 なるちゃんにはかわいそうなのでやめてください。


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