再会

「警邏隊より報告あり、新代田しんだいた11-5の倉庫内に女性の変死体。各車両は至急向かってください。」


環七通りを走行中のクラウン型覆面車に搭乗している三日月みかづき


新之助しんのすけ捜査主任は、同乗者のながれ 凱夫ときお刑事


と共に現場へと道路をUターンした。


三日月達が現場に到着すると、既に現場保存が徹底されており、二人はビニール足袋


とビニールキャップを装着して現場に入った。


「課長、遅くなりました。」


三日月が頭を下げた相手は、警察庁捜査一係本郷浩一郎課長だ。


キャリアのエリートと一言で片付けられるような上司ではない。


曾祖父の代から続く刑事の血筋を持つ血統書付きのお方だ。


今の立場は一介の刑事課長だが、その権限は警察庁長官をも凌ぐだろう。


何せ、曾祖父は現総理大臣、畠山はたやま 憲夫のりおの父親、


憲丞のりすけを後輩に持つ。


卒業した大学、鴨波優新大学かもなみゆうしんだいがくは年功序列を重んじる


縦社会の学校だ。


曾祖父は、国会議員時代の畠山憲丞に頼み、何度か浩一郎の学生時代の不祥事を揉み


消していた。


噂によると人一人殺しているとも言われている。


「ガッチャン、仏さん、家の眼の前でやられてる。何度も犯され終いには絞殺だ。異常者だな。」


ガッチャンという言い方は、課長独特の三日月のあだ名呼びだ。単純に月だから、が


つ。課長はこういうおどけた部分もあり、部下も親しみやすい。


「ここは何の倉庫です?」


「近所の電器店の資材倉庫だそうです。」


鑑識課の奥添おくぞえ まことが、周辺を検視しながら口を挟んだ。


手には、緑色の電子基盤を持っている。


三日月は遺体の身元を奥添から聞き出した。


財布に保険証が入っていたのだ。


清水ゆきゑ26歳、住所は東京都世田谷区新代田11-7エンブレムアパートと分かっ


た。


深夜の事で聞き込みを明日朝にし、遺留品捜索に時間を費やした。






一夜明け、捜査本部の世田谷警察署に担当刑事が集結した。三日月、流を始めとして


本庁から精鋭がかき集められた。


三日月は、その中に懐かしい顔を見つけ声を掛ける。


縞都しまづ、元気かぁ!」


「おお、ガッチャン、久しぶりだなぁ!」


縞都 由鷹ゆたか、31歳、警視庁警邏本部長だ。


「あれから何年になるかなぁ…」


「ガッチャンがあいつを逮捕したおかげで俺の面目も保てた。もう5年になるよ。」


縞都の言った事件は三日月にとっても心に残ったまま消えることのない事件だった。


5年前、街で見かけた不審な男を職務質問しようとした巡回中の警官二人が、その男


を人目の掛かりにくいところまで連れて行ったところ、突然銃を発砲し、警官らは即


死した。


運良く、県警に連絡を入れていたため、応援がその男が逃げるところを目撃。


そのまま追跡しようとしたが、男は銃を乱射し、弾倉が尽きると、背中にショットガ


ンを隠し持っており、また、乱射し始めた。


周囲の多くの住民が犠牲となった悲惨な事件だった。








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旭日章〚鳳凰の翼〛 138億年から来た人間 @onmyoudou

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