犯罪者専門猟師
@who0000
第1話 害獣No.1 性獣①
世の中は森林であり、海でもある。
警察や検察という狩人の手から逃れた運のいい餌達は、生き残るために一般人に擬態しこの広大な自然の中から逃げ続け、善人という天然の餌を食べてブクブクと太っている。
そうして世の中に害を与え続けていると、溜まりに溜まった怨恨に耐えかねた依頼人が『猟師』を依頼する。
その猟師は、命に従い餌をとらえて、依頼人に捧げる。
餌たちは思うだろう。
「一個人に捕まるはずがない。」
まあ、こう思うのは当然だろう。猟師は一人だ。
だがこの猟師は、誰であろうと、何をしようと、どこに居ようと……
必ず見つけて、狩る
東京都千代田区永田町、妖怪たちが跋扈する伏魔殿。
そんな闇渦巻く街の空気には似つかわしい、のどかなで暖かい花屋があった。
「あら、この花…他のお店だと高かったのに、ここだとすごく安い!」
今日も今日とて、紳士淑女の皆々様が一輪の花を買いに、花屋に来ていた。
「花は人生を正しく華やかにする魔法の道具。それを高く売りつける売人とうちは違いますよ。」
奥から優しげな表情を浮かべた花屋の店主、半元が出て来た。
ここ、花屋ハンモトは種類豊富な質の良い花を安く販売している良店として永田町では有名であり、政治家からの注文も多かった。
「でも…こんな安くて大丈夫?最近不景気な上に、税金も高くなって……。」
「お気持ち感謝いたします。お客様の幸せこそが、私の稼ぎです。」
そしてハンモトの店主である
「そう…じゃあ、これを二十本、いただけるかしら?」
「ありがとうございます。お会計1290円でございます。」
ハンモトは創業してからまだ2年も経っていない新店だが、一度も赤字を出さずに経営を続けている。
それも全ては彼の人柄と、彼が大自然から取ってきた種類豊富な花のおかげである。
太陽が真正面に上がり、そろそろ昼食の時間になってきた時、何か思い詰めた表情の女性がやって来た。
「……花を、用意して欲しいんですが。」
「いらっしゃいませ、どのようなお花をお求めでしょうか。」
半元はいつも通り和かな笑顔で接客を行なった。
「……黒百合を、5本。」
普通の花屋であれば、少し変わった注文だと思うだろう。しかし、ここでその注文を行うと、ハンモトは花屋では無くなる。
「…どうぞ奥へ。」
半元は表情を変えずにバックヤードのドアの鍵を開けて、女性をバックヤードへ案内した。
バックヤードに入ると、そこはもう花屋では無くなっていた。
そこはバックヤードという名の、関節ライトの薄い明かりが照らす、異質な空気を孕んだオフィスだった。
ハンモトは黒いソファーに腰をかけて、横長い机を挟んだ同じく黒いソファーに、女性を座らせた。
「…貴方に悪さを働く害獣は、どなたでしょう。」
そこにはもう“親切な花屋さん”はいなかった。いるのは“得体の知れない男”だけだった。
「……小清水榮三。」
小清水榮三、新政党の幹事長であり、政界でその名を知らない者はいないと言われる程の大物政治家。
日本を裏から牛耳っている張本人。
「では、貴方はその害獣の元秘書と言った所でしょうか。」
「…‥はい。」
「駆除内容は、殺害、資産剥奪、社会的殺害など如何でしょうか?」
「……では、それで。」
普通に続いている会話の中に、花屋とは思えない物騒な単語が癒着していた。
「動機はどういったものでしょうか。」
「…………あいつは、最低です。自分の欲を満たす為だけに……ッヒグ…他人の尊厳を………踏み躙って……ヴヴヴ………。」
女性の名前は高橋愛菜、依頼動機は小清水からの酷い性的暴力。
小清水は酷く女癖が悪い上に、かなり酷い男尊女卑。愛人を道具のように扱い。隠し子も何人もいると噂されている。
高橋はその中でもかなり酷い扱いを受けられており、精神病院にも通院を続けていた。
「お願いです……あいつを、あいつをぶっ殺して下さいッ!!」
高橋は憎悪と屈辱に顔を歪めた表情で、半元に訴えかけた。
「承りました。貴方を貪り尽くした害獣を、私が猟銃で仕留めて参ります。」
世の中には、三種類の犯罪者が存在する。
1 バレる間抜け
2 運良く免れたヤツ。
そしてこの二種類の犯罪者を狩り殺す最凶最悪の犯罪者
3 同族殺しの“猟師”。
半元承は、世界でたった一人の三種類目の犯罪者“猟師”だ。
犯罪者専門猟師 @who0000
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