40分前だよ、あのクソ悪夢。

脳幹 まこと

本当にヤバいとこうなるんだな


 分からない。実際のところ、あの夢がなんの意味を示しているのか、俺には分からない。

 でもゾッとした。そして俺は今生きている。それだけが事実だ。俺の魂が穢れているのかもしれないし、誰かの悪意が介入したのかもしれない。それとも何かのお告げかもしれない。

 俺は生きている。霊感なんて便利なものもない。でもいつもの夢に比べて何か特別な重みを感じた。何より死にそうになった。死ぬ感覚、つまり自分が何にも写らなくなるし、心臓は止まったままだし、体はピクリとも動かせなくなるし、そういう感覚。そういう感覚があった。昔は金縛りとかあったもんな。むしろ今が幸せそのものだったから、不意打ちのせいでこうなったのかもしれない。

 俺の祖母が手招きしてた。でも俺はアレはニセモノだとおもってる。祖母はあんなことしない。俺に生きろと言ってくれる。俺の家族はそんなことしない。誰かかもしれない。一番確率が高いのは俺自身の悪意だ。俺自身の悪意が漏れでた。俺の性の悪さがこんな夢を見させた。跳ね返って、俺の心臓を止めようとしたのだ。何とか俺は生きている。死ねばよかったのに、と誰かが言っているのかもしれない。でも、それでも俺は立ち止まっている。肝心なときに前に進まなかった。悪運の強い男だった。だから今生きている。俺は助かったんだ。いや、助かっていないのかもしれない。俺の人生はそもそも窮地だし、現実だって冷たいし、そもそも救ってあげる目的で俺に手を差しのべたのかもしれない。俺は手を取るべきだったのかもしれない。俺の心臓は、健康診断で不完全左脚ブロックと言われたノミの俺の心臓は、それだけで止まったのかもしれない。でも俺は生きている。生きてしまっている。

 俺はこの悪夢から何を受けとれば良いのだ。俺の顔色は確かにどんどん悪くなっていた。俺は霊感こそないが、霊魂を信じるタイプだ。だから呪いや怨念だってあると思っている。俺に覚えがなくても、俺は恨みを買っているのかもしれない。なんでこんなに怖いんだ。忘れてしまう、書いているあいだすらどんどん形を失っていく、あの夢に。分からない。心当たりがない。ひょっとしたら取り決めがあったのかもしれない。コイツをこの日に冥府へと送ってやるという取り決め。そんなことが為されていたのかもしれない。何のために? 知らない。誰かの繁栄のためかもしれないし、誰かの恨みを晴らすためかもしれない。まったく知らないが、せめて前者のためであれとは思う。せめて前向きな成果のために死にたい。

 しかし、嫌なことを思い出した。誰かの計略のため、そんなことをうっかり考えてしまったがゆえに、ある一つの事実に辿り着いてしまった。いや、関係はない。関係はないはずなのだ。たまたまだ。偶然だ。こんなことを考えるのに意味なんてないんだ。でも、一つだけ。あるんだ。そうだ。そうなんだ。今日は祖母の命日なんだ。母からのLINEでは、朝方に急変したと伝えられている。

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