天界が届け
第33話
『大好きなナポリへ
私を助けてくれて、私を受け入れてくれて、私と一緒に居てくれて、本当にありがとう。
どうやら私は天使の力を取り戻したみたいで、天界に戻れる運びとなったみたいです。だからナポリとは、ここでお別れです。本当はちゃんと会って話したかったんだけど、ナポリの声を聞いたら、ナポリの顔を見たら、きっと戻りたくなくなっちゃうのでこうして手紙で伝えることにしました。
ナポリは私のことを心配してるのかもしれないけど、私はもう大丈夫です。ちゃんと進級して、卒業することを誓います。
ナポリと出会えて、本当に幸せだったよ。ナポリを好きになって、落ち込んでたばかりの毎日がどんどん楽しくなったよ。
やっぱだめだ笑ナポリのこと書くとナポリに会いたくなっちゃう笑
でも、私は一人で頑張らなくちゃね。うん。
どうかナポリに、たくさんの幸せが訪れますように。
小橋めいあ』
俺は最後に先輩を見た公園のブランコに座り、先輩の丸っこい文字が書かれた紙を顔に乗せながら青い空を見上げた。天界がどこにあるのかいまいちよくわからないが、きっとこの空の上とか中とかにあるんだろうな。もしそうなら先輩は高所恐怖症気味だから大丈夫だろうか。
先輩は俺がいなくて、大丈夫だろうか。やっぱり一回見に行った方がいい。でもどうやって天界に行くんだ。わからない。
「どうやら天使がいないと駄目なのはお前のようだな」
隣の空いていたブランコに、いつからいたのかわからなかったがペペ子が座っており、足で地面を蹴って勢いよく漕ぎながら言った。
「ずっと先輩には俺がいないとダメだと思ってた。でも先輩がいなくなってダメなのは、俺の方だった。先輩がいないのが、会えないのが、こんなに寂しいなんて」
「お前なら会える」
「は?」
「力を使え。お前なら、世界の根幹に触れられる」
何いきなり鈴っぽいこと言ってんだと耳を疑ったところで、ペペ子がブランコから降りた。
「小橋めいあの天界は自分の家だとでも祈っておけ」
そしてペペ子は手を振りながら立ち去っていった。何を言ってんだこいつはと思いながら、俺は。
「先輩の天界は、俺の家だ」
と口にするだけした。
なんてこと言っても先輩が戻ってくる訳ないよなと思いつつ玄関のドアを開けたら「せねあおふぁ!?」いた。先輩がいた。輪っかも羽もない普通の人間の姿の先輩が、ゆったりとしたワンピースを身に纏った先輩が、そこにいた。
「あ……ナポリ……また、戻ってきちゃった。あはは……」
「なんで!?」
「まだ、この家の住民とやるべきことをやっていないだろとか言われて……追い出されちゃった」
「やるべきこと――?」
と、俺が疑問を浮かべて時には既に遅かった。
「やるべきことっていったら、これしかないじゃん!」
俺は床に押し倒され、ズボンのベルトを半ば強引に外されていく。
「あああああああああああああ!」
俺は必死に逃げ回るが、先輩は止まらなかった。止まってくれなかった。
いや。
止める気が、無かったのか?
「大好き大好き大好き大好き大好き大好きだよナポリイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」
「誰か! 頼む! この状況を何とかしてくれええええええ!」
雲一つない青空には、色鮮やかな七色の虹がかかっていた。
魔怪機構と落ちこぼれ天使の破怪活動 夜々予肆 @NMW
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