コピー人間

kuu

第1話 コピー人間

『ピンポーン』


 インターホンが鳴りまさるの母は扉を開けた。

 宅配業者に似た服を着た男性が笑顔で


「回収に伺いました」


 と言った。

 まさるの母は口にした。


「回収?」

「はい。まさる君の回収です」


 まさるの母は激怒した。


「何を言っているのですか! まさるはうちの子です」


 男性はニタニタ笑い。


「まあまあ、奥さん。まさるくーん。こっちに来てくれる」


 リビングからまさるがやって来た。


「きたきた」


 と言いながら男性はズボンのポケットからリモコンを取り出しスイッチを押した。

 まさるは動かなくなった。

 まさるの母は振り向きまさるに駆け寄った。


「どうしたの? まさる」


 まさるの母はまさるの肩を掴む。


「まさる! まさる!」


 反応がない。

 ……

 まさるが人間の姿から人形へ変わってゆく。

 まさるの母は驚き手を離した。

 まさるの母は男性に駆け寄る。


「まさるに何をしたの?」


 男性は口を開く。


「さっきも言ったでしょ。回収するって。まさる君はコピー人間なんですよ」


 数秒後、まさるの母の口が開いた。


「コピー人間? じゃあ本物のまさるは?」


 男性の表情が真顔になった。


「死にました。自殺です。火葬はうちの方でやっておきましたから。安心してください」


 まさるの母は怒鳴った。


「ふざけないで。火葬したなんて信じられない。うちの子を返して」


 男性は左ポケットから封筒を取り出し、


「この中に書類あるから。文句が言いたいのなら政府にいえ」


 まさるだった人形の腕を掴んだ。

 まさるの母は泣き出した。


「まさるを連れて行かないで」


 怒鳴りつけた。


「まだわからねえのか。この人形はコピー人間なんだよ! 10年も良い夢見れたんだ。ありがたく思え!」


 男性はまさるだった人形を運び去った。


 どこにでもいるコピー人間。

 今日もどこかで売買が行われていた。

                                                  

                                    完

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