降嫁した主人公が求めているのは、『普通』。政略結婚でもいい、と思ってやってきた翠山国には、ないと聞かされていた後宮が存在している!?
さて、「普通じゃない」彼女はそんな事態をものともせず突き進む! 確かに彼女は特殊だけれど、一番特殊なのはこの前向きな心構えなのかもしれない。
初めは心を開かなかった人々が次第に打ち解けていく様子は読んでいて楽しい。
そして、物語は、「ガチで?」とびっくりするような展開に。そのとき、主人公・桃英は? そして妃たちは?
憎めないどころか愛おしいヒロインと、王太子・星狼が歩み寄りデレて行く展開は最高です。
(そしてぼくの推しは桃英のお兄様。いや〜すごい登場の仕方で度肝抜かれた! 最高!)
小国の王太子・星狼に嫁いだ主人公・桃英には、絶対にバレてはならない秘密がありました。
それを隠して自分の役目を果たそうと輿入れするも、話に聞いていなかった後宮が存在するわ、王太子は鼻持ちならないスカした男だわで、もう最悪?!
前途多難すぎる後宮生活が、いま始まる——!
桃英は、ただただ溺愛を享受するだけじゃない、自らの意思で道を切り開く強い女性です。
『平凡』に平穏に過ごしたい彼女は、最初はすれ違っていた星狼や後宮にいる3人の妃たちともきちんと向き合おうとします。
他の3人の妃が抱える秘密や事情。
なぜ星狼は後宮を作ったのか。
それらが明かされるにつれ、本作を単に『恋愛もの』と呼ぶには惜しいと感じました。
この物語には、恋愛関係に限らず、個人と個人が向き合い心を通じ合わせるさまが丁寧に綴られています。
誰しも、少なからず『生きづらさ』を抱えているものです。
この中華後宮という世界観の中で、人それぞれの『平凡』の大切さが、一層くっきりと描き出されているように感じました。
当初あれだけ最悪だった星狼殿下の印象が、途中から驚くほど変わっていきます。
それはもう、びっくりするくらい心惹かれます。
桃英と一緒になって「この人ならば」と読者も自然に思える、説得力ある情と愛のストーリーなのです。
女性だけでなく、幅広く受け入れられる物語だと思います。
こんなに胸の温まる中華後宮恋愛もの、見たことない!
優しい恋愛ヒューマンドラマをお求めの方におすすめしたい作品です。