神話から始まり、雲海と断崖、機械竜とドラゴンライダーへ一気につながる導入が、とても心地よく胸に入りました。ドラゴンと人の慢心が世界を何度も作り変えてきた神話が、そのままロンたちの「今」へ続いている感覚があり、プロローグだけで世界の奥行きが伝わってきます。
とりわけ印象に残ったのは、鉄の塔の昇降機上でのBBのエピソードです。地上に出たい一心でハナを帝国に引き渡そうとした少年が、あっさり撃たれ、「ごめんなさい……逃げて……」とロンの腕の中で謝る場面は、フォールミーの過酷さと、子どもである彼らの切実さを一瞬で突きつけてきて、読みながら息をのみました。その直後にベルマンと機械竜が炎をまとって乱入し、怒涛の空中戦から雲海の嵐へ落ちていく流れも見事で、感情とアクションがきれいに連動しています。
ロンとハナ、ベルマン、紅蓮のフレア、さらに雲海の底のアバロンとドワーフのマンガン…。どの人物・種族も一癖あるのに、会話のテンポが軽やかで、出会うたびに好きになっていきます。貧しい鉱山の生活や雲海の底の怪物・神の使いのビジュアルも鮮やかで、「次はどんな景色とドラゴンが出てくるんだろう」とワクワクしながら読み進めました。
ロンの父の足跡やハナ本来の名と使命、アバロタイトの謎など、物語のタネが丁寧にばらまかれていて、ここから空と雲海と地上がどうつながっていくのか、とても楽しみです。続きの更新を心待ちにしています。
注
ネタバレをできるだけ避けるため、プロローグと最初の第10話までのレビューにしています。悪しからずご了承下さい。
圧倒的に〝空気がある〟物語!!
神話詩の格調から始まり
断崖の追撃、鉱山都市の息遣い
雲海の底の異相へと──
舞台が変わるたびに
温度・匂い・手触りが更新されていく。
説明を台詞と
アクションに埋め込む筆致が巧みで
読み口は軽いのに世界は深い!
主人公の観察→仮説→即応が戦術に結び
操竜シーンは〝体で伝える〟快感が抜群!
可憐さと秘密を同居させたヒロイン
寡黙だが手際で信用を得る相棒役
矜持と笑みの裏に熱を秘めた強敵――
主要人物は立ち姿で性格が伝わる。
特に「縦」──(落下、上昇、潜航)を
使った見せ場が続き
ページをめくる指が止まりません!
硬いパンや指笛、鉱石の属性など
生活ディテールと〝古層の謎〟が
互いを増幅し
伝奇と冒険が気持ちよく結合。
章末の止め方も上手く
続きが自然と欲しくなります。
総じて
王道の冒険譚を現代のリズムで磨いた
胸の高鳴りが正面から帰ってくる一作!
〝落ちるほど、空を知る〟――
その標題に違わぬ高揚があります!!!
読み進めるたび、胸の奥で何かが静かに燃え上がる――『DRAGON RIDER』は、そんな物語です。少年ロンが出会うのは、滅びゆく世界の中でなお命の意味を問う少女ハナと、傷を抱えた機械竜コルル。三者の絆が少しずつ結ばれていく過程が、とても人間的で、美しく、時に切なく描かれています。
壮大な空戦や帝国との攻防、その迫力に圧倒されながらも、物語の根底に流れるのは「護る」という想いの尊さ。傷つき、迷いながらも、自分なりの夜明けを目指す登場人物たちの姿には、そっと背中を押されるような温もりが感じられます。
きっとこの世界に触れたとき、あなたもロンたちと一緒に空を駆け抜けてみたくなるはず。迷いや不安を抱える今だからこそ、ぜひ、この壮大な冒険の続きを見届けてほしいと心から思います。
雲海に浮かぶ断崖絶壁の採掘都市、機械に覆われたドラゴン、そして光届かぬ暗黒の古代都市——この作品の世界観の作り込みに圧倒された。
貧しい採掘労働者の青年が、思いがけない出会いから大空へ飛び立つ展開は王道ながら爽快感があり、随所に散りばめられた父の足跡や古の神話といった謎が、先の展開への期待を掻き立てる。
ドラゴンライダーへの憧れ、階級社会の理不尽さ、そして自由な空への渇望——キャラクターたちの想いが丁寧に描かれ、冒険の高揚感だけでなく、物語に深みを感じさせてくれる作品。
骨太なファンタジーが好きな方、じっくり世界に浸りたい方におすすめ!
遥か昔、神に祝福されたドラゴンは、やがて人と争い、空へと忘れ去られた。
そして今、世界の終わりと呼ばれる断崖「フォール・ダウン」の上空に、
2体のドラゴンが交差する。ひとつは機械の鱗を纏い、もうひとつは紅蓮の炎をまとう。
背に乗るのは、帝国に追われる姫と、それを追う「紅蓮のフレア」。
命からがら飛び込んだ雲海の中、姫と機械ドラゴンは制御を失い、
深く濃い霧の底へと堕ちていく。
彼女を救ったのは、採掘都市フォールミーで働く整備士の青年・ロン。
偶然出会ったふたりは言葉を交わし、互いの名を知り、
やがて「ヨルムンガンド」という名を持つ、帝国の空の向こう側を目指すことになる。
雲に包まれた崖下の都市、ドラゴンが舌を出す鉱石の香り、
そして鉄骨の昇降機の向こうに霞む「天国」。
空から落ちてきた姫と、空に憧れる青年。
その出会いが、再び「空の物語」を動かし始める。
古の神話と科学が交差する世界で、ドラゴンと人が織りなす冒険譚『DRAGON RIDER』。帝国に追われる姫ハナと、鉱夫の少年ロンが出会い、機械竜コルルと共に空と大地を駆け巡る展開は、王道ながらもテンポが良い。ワイバーン、深紅のフレア、目玉の怪物、神の使い──と、次々に現れる強敵や謎の存在は、物語世界の奥行きを深めている。また、ロンの無邪気さとハナの使命感、ベルマンやマンガンら脇役の存在も物語に温かみと深みを添える。とりわけ“古の都アバロン”の描写は神秘に満ち、世界観の核として魅力的。敵か味方か曖昧な存在が多く、先の読めない展開にワクワクさせられる。ドラゴンと心を通わせ、己のルーツと向き合うロンの成長にも期待が高まる、骨太なファンタジー作品です。