本編

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【スポット1 JR柏駅東口・駅前商店街「柏二番街」】

//SE 街の喧騒

//SE 歩いている靴の音(主人公)

//SE キーンという高音の耳障りなスピーカー音


「まっすぐに進んで……アーケードが終わる頃……五つの答え。その……頭を……取って……」


 まるで電波の悪いラジオのように、ところどころ途切れて聞こえない。音の発信源を探して、左右を見まわした。しかし、発信源となるようなスピーカーは特に見当たらなかった。それどころか、誰もこの音に気がついていないようだ。


//SE 溜め息(主人公)


 すぐに音は止んだので、自分だけに聞こえた「耳鳴りだろう」と考え、気を取り直して商店街へと足を踏み入れた。


//SE 歩いている靴の音(主人公)

//SE 「どぷん」という水に入ったような耳に膜の張る音


 入ってはいけない場所に入ってしまったような、そんな無性に不安な気分に襲われて、背中がゾワゾワと鳥肌を立てる。そして、その不安は『声』の形となって姿を現した。


「ねぇ。あなた、ひとり? 迷い込んじゃったんだね。じゃあ、あたちと遊ぼうよ。遊ぶゲームは『なぞなぞかくれんぼ』!」


 舌足らずな幼児のような喋り方。だが、なぜかその少女は高齢者のような違和感があった。そのチグハグさはとても気味が悪かった。何より周りを見回しても私に話しかけてくる人物はいない。


「ふふふ。そんなキョロキョロしちゃって、あたちのこと探してるの? もう『なぞなぞかくれんぼ』は始まってるのよ。ほら、もたもたしてちゃダメ」


//SE 不気味な笑い声

//SE 子供の走り回る靴音


「鬼さん、こちら♪ 声の鳴るほうへ♪」


//SE 不気味な笑い声

//SE 子供の走り回る靴音


「じゃあ、まずは一つ目のなぞなぞ! かわで挟む植物なーんだ?」


「え? そうだね。『し』はポエムの『詩』かもしれないし、デスの『死』かもしれないね。キャハハ」


「簡単すぎた? そう。答えは『かしわ』!」


「ねぇねぇ、ってた? 柏市の木はね、そのまんま『柏』なのよ。うふふ。おもちろいでちょ?」


「さぁ、鬼さん、こちら♪ 声の鳴るほうへ♪ キャハハハハハハハ……」


//SE 不気味な笑い声

//SE 子供の走り去る靴音


 少女の笑い声は走り去る靴音とともに消えていった。



【スポット2】

//SE 街の喧騒

//SE 歩いている靴の音→立ち止まる(主人公)


商店街ちょうてんがいには、たくちゃんの看板があるよね」


 店の看板を見ていたら、また突然あの声がし始めた。


「看板にはよく〇〇円って値段が書いてあるよね。それにちなんだ二つ目のなぞなぞ! 百円、千円、一万円、十万円、百万円……じゃあ、絶対に終わりがないのは何円だ?」


「チック、タック、チック、タック」//クスクス笑い


「答えは、永遠えいえん! すぐにわかった? ほんとにぃ?」


「……あたちと違って、人間には『永遠』がないから可哀想」//小声で


//SE タッタッタと走り去る音



【スポット3】

//SE 街の喧騒(外国語も混じっている)

//SE 歩いている靴の音→立ち止まる(主人公)


 商店街のアーケードで道ゆく外国人たちとすれちがう。

 

「海外から柏市に来てる人もたくさんいるんだよ! 知ってた?」


 話しかけられるのも三回目なので、私も少し慣れてきた。そこまで驚かないでいると、彼女は少々つまらなさそうだった。


「柏市は千葉県の中で五番目に在留外国人の人口が多いんだって」


 私はそれを聞いて、一番多い市はどこなのだろう、と考えを巡らせた。やはり、千葉市だろうか。


「なによ! あたちの話がつまらないっていうのッ!?」


 私の反応が悪いせいだろうか? 少女は急に怒り出した。


「そんな人にはとっておきの怖いなぞなぞにしちゃうんだから!」


「三つ目のなぞなぞは……日本人、アメリカ人、中国人……たくさん色々な人々がいるけど、とっても恐ろちいのは何じんでちょう?」


「チック、タック、チック、タック……ほらほら、早く答えて!」//クスクス笑い


「ブブー! 時間切れ!」


「……答えはね……殺人さつじん」//急に静かな低い声




【スポット4】

//SE 街の喧騒

//SE 歩いている靴の音→立ち止まる(主人公)


 料理屋さんの前で看板を見ていると、また声がしてきた。


「お腹が減ってるの? じゃあ、四つ目のなぞなぞは料理のなぞなぞにしてあげるね。問題はぁ〜、あららら、とりがらスープの中で鳥が泣いてるよ! どうちてかな?」


「答えは、亡骸なきがらにされたから! かわいそうだねぇ。かわいそうだねぇ」//クスクス笑い


「ギャハハハハハハハ!」

//笑い声はぶつ切りで突然に終わる



【スポット5】

//SE 街の喧騒

//SE 歩いている靴の音→立ち止まる(主人公)


 花屋さんが見える。おばあちゃんにお土産にお花でも買って行こうかな。


「ねぇねぇ。お花好きなの? あたちはお花、大好き! 柏市のね、お花って『芝桜』なのよ。芝桜の花言葉知ってる?」


「普通の色のじゃないよ? 血みたいに濃~いピンク色の芝桜。それが血だまりみたいに、あたり一面に咲きほこってるの……」//うっとりしている様子


「そんな血の色の芝桜の花言葉はね……」



」//音量大きめ・怖い声



「キャハハハハハハハ! ビックリちた? ねぇ、ビックリちた?」


「じゃあ、次のなぞなぞ、お花の問題ね! これ、すごく、むずかちいかも! あたちの自信作!」


「あなた、解けるかちら?」//クスクス声


「なぞなぞ五問目! 『さくら』のお花に1−1+1すると『しきり』、

じゃあ『あざみ』のお花から1+1+2する学校で流行ってるものなーんだ?」


「チック♪ タック♪ チック♪ タック♪」


「さすがにヒントあげようか?」


「『さくら』の一文字目『さ』の次の文字が『し』、二文字目の『く』の一個前の文字が『き』、三文字目の『ら』の次の文字が……ここまで言ったら、もうわかるでちょ?」


「えー! まだわからないのぉ? じゃあ、さらなるヒントです!」


「同じように、『あざみ』の一文字目『あ』に1足すと『い』でしょ? 二文字目『ざ』も1足す。そして、三文字『み』は2足すの!」


「これなら、わかったでちょ?」


「そう! 答えは、イジメ!」//明るく可愛い邪悪な声


//SE ケタケタと笑う声(複数)

//突然すべて無音に


「……」


「ふぅん。そう……あなたの学校ではそんなもの流行ってないの」//つまらなさそうに


「でも……それ、あなたが気がついてないだけじゃない?」//低く恐ろし気な声



【スポット6】

//SE 歩いている靴の音(主人公)


 もうすぐアーケードが終わってしまう。私は今までのなぞなぞの答えを頭の中で並べてみた。


「かしわ」//機械的な音声

「えいえん」//機械的な音声

「さつじん」//機械的な音声

「なきがら」//機械的な音声

「いじめ」//機械的な音声


 そして、唐突に商店街に入った時にスピーカーから流れてきた音声を思い出した。


「五つの答え。その……頭を……取って……」


 かしわの「か」、えいえんの「え」、さつじんの「さ」、なきがらの「な」、いじめの「い」……ということは?


//SE 歩いている靴の音→立ち止まる(主人公)



「か・え・さ・な・い」//音量大きめ・ジャンプスケア



//SE 急いで引き返す靴音(主人公)


「あれれ? どうちて、帰ろうとするの? もうすぐゴールなのに。あたちが隠れてるところ、ほら、すぐそこだよ?」


//SE 走る靴音・息の切れる声(主人公)


「ねぇ? ねぇってばぁあああ。帰らないでよぉおおおう。あ~た~ちぃぃいいいいいをぉぉおおおお、みつけてぇよぉおおおお」//スロー再生・声を伸ばす不気味なエフェクト


//SE 何か巨大な獣が追いかけてくるような足音


 が背後から追いかけてくる。


 追いつかれるッ! そう思った瞬間。


//SE スマホの鳴動音


 ブーブーブー。スマホが鳴動する。おじいちゃんからのメッセージだ!


「あ~あ。お迎えの車がもう来ちゃったんだね。あとちょっとだったのにな。残念。でも、また遊ぼうね」


「今度こそ……きっと……ね? キヒヒ……」



(了)

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囁囀害(しょうてんがい)~異界までの謎々隠れんぼ~ 笹 慎 @sasa_makoto_2022

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