囁囀害(しょうてんがい)~異界までの謎々隠れんぼ~

笹 慎

プロローグ

ロケーション:千葉県柏市 JR柏駅東口・駅前商店街「柏二番街」



 祖父母の家がある千葉県柏市を一人で訪れた貴方。


 人々の喧騒に紛れながらJR柏駅の改札を抜け、駅に到着したことを祖父にスマホのメッセージで知らせる。すると、「渋滞で迎えに行くのが少し予定よりも遅くなる」と返事が来た。


 貴方は、しかたなく迎えが来るまでの時間つぶしのために駅前商店街へと向かうのだった。


 駅前のロータリーの上に作られた高架広場を通りすぎ、階段を下りる。貴方は、「二番街」と書かれたアーケードを見あげた。


 柏二番街。番街だが、柏市で一番活気のある商店街だ。「一番街」には決してなれない「二番街」を少々不憫に思いながら、貴方はアーケードをくぐる。


 その時だった。


 キーンとスピーカーが壊れたような音を立てた。突然の不愉快な音に、貴方は思わず顔をしかめて、耳を両手で塞ぐ。


「まっすぐに進んで……アーケードが終わる頃……五つの答え。その……頭を……取って……」


 まるで電波の悪いラジオのように、ところどころ途切れて聞こえない。音の発信源を探して、左右を見まわした。しかし、発信源となるようなスピーカーは特に見当たらなかった。それどころか、誰もこの音に気がついていないようだ。


 すぐに音は止んだので、貴方は自分だけに聞こえた「耳鳴りだろう」と考え、気を取り直して商店街へと足を踏み入れた。


 しかし、足を踏み入れた途端に入ってはいけない場所に入ってしまったような、そんな無性に不安な気分に襲われて、背中がゾワゾワと鳥肌を立てる。


 だが、貴方は不安を感じながらも、何かに引っ張られるように商店街の奥へと歩を進めるのだった。

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