後編
目が覚めると、厚い布の壁を通して光が見える。
朝日が登り始めたようだ。
私は、出入り口のジッパーを上げて外へ出る。
朝日が白銀の世界を照らし始めていた。
魔白な大地から蒼空を眺め、両手を高く上げて力いっぱいに伸びをする。
私は、新雪を選んで丸く固めると空高く、放り投げる。
その雪の球に乗って私は肉体を離れ、高く高く舞い上がり、地上にいる私が小さくなって行くのが見える。
やがて自分の姿も見えなくなり、地球の姿がはっきりと見え出す。
雪玉は太陽系を越え、天の川銀河を越え、星の渦の外へと飛んで行く。
とてもとても小さな存在。
広大な宇宙にとっては意味なんて無い存在。
光り輝く巨大な恒星にとっては存在しないと同様な小さな玉。
存在も無い、意味も無い。
それでも生きている。
気がつくと私は、真夜中過ぎの町を歩いていた。
暗い街灯だけが灯る道を、重い荷物を背負いながら、この街の坂の上にある、我が家を目指して、凍える足を一歩一歩と前に出す。
目の前には、音も無く、魔白な雪が降り続けていた。
無白(むはく) 織風 羊 @orikaze
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