猫ふんじゃったの謎

はるこむぎ

猫ふんじゃったって何……?

「ピアノうまいねぇ。私なんて、猫ふんじゃったくらいしか弾けないから」

 子どもの頃、よく言われたこと。

 今でこそ言われ慣れたが、最初に言われたときはかなり戸惑った。


 そもそも『猫ふんじゃった』って何……?


 4歳からピアノを習っていた私は、有名な曲はだいたい知っていた。

 しかし、猫ふんじゃったなんて曲は聞いたこともなかった。

 習ったこともなければ、聴いたことも、弾いたこともない。


 え、猫ふんじゃったくらいしか……?

 猫ふんじゃったは「くらい」なんて馬鹿にされるような曲なのか……?

 そして、弾けて当然というその感じは一体何なんだ……?


 弾いてもらった。


 え、どうして指一本で弾くの?

 しかもそんな馬鹿にするほど簡単な曲でもないような……。

 私、軽くパニック。


「えっと……、誰に習ったの……?」

 思わず聞く私。

「習ったって言うのかなぁ。見てたら自然に弾けるようになったというか……」


 なんだ? 君は天才か?

 手元を見てたら自然と弾けるのか?


「あ、ああ……。そうなんだ……」

 私は困惑しながら、そう口にした。


 ほかの子も同じように口をそろえて言う。

「私は猫ふんじゃったくらいしか弾けないよ」


 え……、怖い怖い怖い怖い……!!

 どうしてみんな猫ふんじゃっただけ弾けるの!?

 それ誰が広めてるの!?

 しかも、猫ふんじゃっただけは弾けるようにしようって情熱はどこからくるの!?


 みんな同じように楽譜は見たことがないという……。

 謎だ……。


 しかも、猫ふんじゃったはタイトルこそ違うが、世界中で知られている曲らしい……。


 え、世界中でみんな言ってるの……?

「私、猫ふんじゃったくらいしか弾けないよ」って……?

 怖い……。


 そんなことを言ってる私も、今では猫ふんじゃったが弾ける。

 なぜかって?

 みんな弾けるのに、自分だけ弾けないのもなんか怖かったからだよ!!


 大人になった今でも、猫ふんじゃったの謎は深まるばかり……。

 なんでみんな何も思わないんだよー!!!

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