さんたくブラックサンタ 7(終)
「わかりました。ちょうど次が私の手番ですね。12番を確認します」
「HOHOHO!謎の凶器が警察の手に!これは一大事ですネェ~~!!まだ見ぬ殺人犯くんはこれをどうするんでショウネェ~~警察サンを殺すしかなくな」
「あーったまたま持っていたナイフで手を切っちゃいました」
「HO?!」
大門さんの手からめちゃくちゃな量の血が出ている。たぶん動脈をおもいっきり切ったんだろう。……え?!何してるの?!あの人?!
「お、お前何やってんだ?!」
「キャーーーッ!!」
他のプレイヤーたちもあまりのことに戸惑っている。その中心で、大門さんはさらに他の刃物を取り出してザクザクと手や指を斬りつける。
「ついでにカッターとハサミでもやっちゃいました。とっても痛いですね」
「痛いですねじゃねえだろ、オイ!水田、救急キットあるか?!」
「今出します!!」
私はナップザックを急いであさり出す。
「なんなんだいきなり、あの女……手が血まみれで……」
そこまで言って、五十嵐さんは急に黙った。
「待てよ、血まみれって……」
「はい、五十嵐さん。察しが良いですね。血まみれだからいいんです」
大門さんは不敵に笑って、赤黒い血液でどろどろになった刃物類を、確認していた12番のプレゼントに投げ入れた!
「これで12番の箱に入っていた『血まみれの何か』が何だったのか、誰にもわからなくなりました。安心してください。しっかり血液に『何か』が沈むまでやりますので、刃物を入れた私にも『何か』が何だったのか見えなくなりますよ」
プレゼントの箱には、もはや血溜まりしか見えなくなっている。
「さあ、『ブラックサンタ』。ゲームを続行してもかまいませんね?」
「こ、ここ、この人間ッ!!頭がおかしいですネェ~~!!??」
『ブラックサンタ』が慄いている!
「ルール違反は『無し』です。ゲームは続行!みなさん、『必勝法』を遂行して、ゲームを終わらせましょう!」
血まみれのプレゼント箱を持ったまま、大門さんは私たちに笑いかけた。
その後、なんとか『必勝法』をやり続けた私達は、最終的に『死』のプレゼントを全て明らかにした。当たりのプレゼントだけを選び抜いたあとは、プレイヤー全員が目隠しをしたうえで、プレゼント側をシャッフルし獲得の処理を行うことで、問題の12番のプレゼントが誰の「ほしいもの」だったのかもわからないまま、ゲームを終わらせることができたのだ。
「ワ、ワタシの『プレゼント交換』がァ~~!!」
崩壊していく『怪談空間』の中で、デスゲームを完膚なきまでに破壊された『ブラックサンタ』が悔しがる声が聞こえて、気がつくと私たちはもとのデパ地下にいた。
「終わった、のか……」
「みたい、ですね……」
私と五十嵐さんは周囲を確認して、ため息をつく。
ジングルベルのBGMと、行き交う人々の喧騒。戻ってきた。
「無事ですか?」
声をかけられ振り返ると、大門さんがいた。手はきっちりと包帯が巻かれている。
「そりゃこっちのセリフだ。あんだけ血ィどばどば出してて」
「問題ありません。プレゼント箱の容積から計算して、失血死しない量であることは確認済みですから」
「そういう問題じゃなくてだな……まあ、いいけどよ」
五十嵐さんは頭を掻く。
「国民を守るのが私の、私たちの使命ですから。それでは、よいクリスマスを」
かつかつ、と靴をならしながら、大門さんはデパ地下の人混みの中に消えていった。
「はあー……」
私たちは、どちらからともなく、またため息をついた。
「大門さん、すごかったですね……デスゲームってあんなふうに台無しにできるんだ……」
「ああ、さすが本職だ。勉強にはなったが、さすがに俺はあそこまではやれねえな」
念入りな準備と人心掌握術、ゲームのルールと性質を理解し裏をかく頭脳。そして無茶を通す覚悟。すごいものを見た。
「……腹減ったな」
「そうですね……」
急にどっと疲れが襲ってきて、お腹も減ってきた。
「チキンでも買って帰るか。まだクリスマスじゃないけど」
生きていてお腹が減るのは、素晴らしいことだなあ、と私は呑気に思った。
「……そういえば五十嵐さん、『怪談』がサンタさんじゃなくて『ブラックサンタ』で、ちょっと残念でした?」
「は?!残念じゃねえし。別に。ちっとも」
「ホントですかー?」
「ホントだし!」
『さんたくブラックサンタ』おわり
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