この作品は、壮大な神話的世界観と繊細な人間ドラマが見事に融合した、心に響く物語です。
物語の冒頭から、神に仕える二人の神使、那岐と那美が抱える苦悩や人間への深い慈愛が丁寧に描かれており、神と人の境界線を超える禁忌を犯してしまった二人の葛藤と悲哀が鮮やかに浮かび上がります。特に、天神の与えた「永遠の命」と「永遠の転生」という過酷な運命は、読者にも強い印象を与え、その深い悲劇性が物語に奥行きを与えています。
また、舞台が現代に移り、主人公の青年・烏兎が抱える過去の謎や不思議な力、そして恋心を抱く少女・望との切ない関係性など、青春の甘酸っぱさと霊的なミステリー要素が絶妙に絡み合っているのも見どころです。
作品の中で特に魅力的なのは、作者が丹念に紡ぎ出した神話の世界と現実世界が重なり合いながら進行する点です。烏兎が直面する霊鬼との戦いを通じて描かれる人々の心の闇や、彼が受け継いだ神気『寂滅為楽』という浄化の力の描写には、読者の心を惹きつける美しさがあります。
複雑な設定や難しいテーマがある一方で、分かりやすく共感を呼ぶキャラクター描写が物語を支えているため、深い内容ながらも読みやすく、自然と物語の世界に引き込まれてしまいます。
永遠の愛や悲劇的な因果といった普遍的なテーマを巧みに織り込みながら、人間の弱さや強さ、愛情の尊さを丁寧に描いたこの作品は、読み進めるうちに自身の心にも問いかけてくるような深みがあります。
ぜひ多くの方に、この切なくも美しい物語を体験していただきたいと思います。
ここまで純粋に和を軸に据えたファンタジー小説は、
なかなか読めないのではないでしょうか。
ほのぼの、シリアス、謎・・・・・・。
細かな描写に様々な示唆のある本作ですが、
やはり主人公・烏兎の混じりけのない優しさ、繊細さが美しい。
類は友を呼ぶとはいったもので、周りのメンバーにも愛着が湧きます。
ワンシーンの言葉遣い一つとっても、作者様の言葉に対する造詣、心遣いが感じられ、
読み手はこの水のように寄り添う世界へ、没入していきます。
最新話を、拝読しました。ご事情は、作者様が近況ノートに書かれておられました。
全てを把握できたわけではありませんが、時間をかけてでも、より良い回復の道を辿られることを切に願います。
そしていつか、この物語がまた、進み始めたとき。
この作者様にしか描けない異界への扉は、その世界の全容を現すことでしょう。
古の因果が現代の琵琶湖畔へと繋がり、烏兎の静かな祈りが神へと届く――そんな幻想的な世界観に引き込まれました。伝説と現実が交差する物語の展開は、まるで時の流れが溶け合うようで、心にじんわりと響いてきます。
特に第10話の烏兎の祈りの場面は、純粋な想いが伝わる美しいシーンでした。五円玉を探しながらも、結局「気持ちがこもっていれば十分」と思う姿に、彼の素朴でひたむきな性格が垣間見えます。鈴の音が響くなか、望との関係を修復したいと願う彼の切実な想いには、読んでいるこちらまで胸が熱くなりました。
過去の因縁を背負いながらも、それでも未来を切り開こうとする姿は、静かでありながら力強い。烏兎が辿る道の先に、どんな奇跡が待っているのか、続きを読むのが楽しみです。
現代と神話的な世界が交錯する和風ファンタジー。主人公・烏兎(うと)は、普通の高校生でありながら、霊的な世界と関わる不思議な能力を持っています。幼馴染の天満望(あまみつのぞみ)との微妙な距離感や、祖母の弥呼(みこ)との特別な関係を描きつつ、少しずつ彼の運命が明らかになっていきます。霊鬼との戦いや、狐霊たちとの交流を通じて、烏兎は自身の力と向き合い、何を守るべきかを探していきます。
キャラクターたちはみな個性的で魅力的。烏兎は優しさと強さを兼ね備えており、望との関係には興味を惹かれます。弥呼の厳しくも愛情深い指導や、白狐(びゃっこ)・黒狐(こっこ)の無邪気な姿も、物語に彩りを添えています。それぞれが抱える想いや葛藤が繊細に描かれており、どのキャラクターにも感情移入しやすいです。
言葉の美しさと幻想的な世界観も魅力です。繊細で詩的な表現が多く、静謐な雰囲気が見事に描かれています。和の要素が散りばめられた文章が新鮮な感覚を与えてくれます。
心にじんわりと残る物語。人と人、人と霊とのつながり、そして運命に抗う意思。そうしたテーマが優しく描かれ、読後に余韻を残します。続きが楽しみな物語です。
日本神話をベースとしていて、しっとりとした文章に切ない恋愛描写が胸を打つ御作品です。
作者様の言葉選び、感性が本当に繊細で、情景描写が特に素敵だなと感じました。
私自身は滋賀県の白髭神社を訪れたことがないのですが、主人公の烏兎君を通して、実際に目にしているかのような色鮮やかさがありました。
朝の清々しい空気感だったり、琵琶湖の近くを自転車で通る際の風を切る音、水の匂い、鳥居の朱色――まるで目に浮かぶようです。
そんな美しい情景描写と共に描かれる登場人物達は真っ直ぐとした心根が美しく、透明感があります。
だからこそ、彼等が悩み悲しむ場面は心がより揺さぶられ、祈るような愛おしさを覚えることでしょう。
そんな彼等の運命は、今後どうなっていくのか。
これからがとても楽しみな御作品です。
この物語は、愛を知るゆえにみ大きな罪を背負ってしまった二人の神使の悲しい物語から始まります。
これ以上の辛い罰が、あるのだろうか?
そんないたたまれない気持ちの中で進んでいく物語は、逆にほのぼのとした青春物語。
だけど優しさに溢れる男の子、鳥兎くんのキラキラした青春に見え隠れし始める彼の素性には、どうやら色々とあるみたいですね。
彼にしか視えていない魄霊という存在、そしてそれを滅する言霊の力。そして……彼が失くしている幼い日々の記憶。
とてもワクワクするファンタジー要素満載の展開が繰り広げられていきますが、それがどのように冒頭の悲しすぎる物語に繋がってゆくのか?今後の展開に目が離せない、おすすめの物語です。
異世界恋愛なんですが、ファンタジー色の強い異世界恋愛になります。この表現が正しいかどうかはわかりませんが、恋愛としては、ちょっと重めな、でも純粋で透き通った感じの恋愛小説です。
前作もそうなんですが、みゆきさんの書く物語の大きな特徴というか、ウリは透明感のあるキャラクターでして、なんというか、外連味のない、本当に心に直接語り掛けてくるようなキャラ造詣でして、上手く表現できないですが、自分の目の前で繰り広げられてるかのような伝達力をもった親しみがあるけどメッセージ性が強いキャラ造詣なのです。
実は、今回、カクヨムコン9に恋愛小説を書かせていただいたのですが、本作も参考にさせていただいた小説の一つです。純愛系のお話がすきな人にはおすすめな小説です!