第五話
祭りが催された翌日。城にも青年の評判は広まっており、先王たちの耳にも入っていた。
「聞きましたか。今年の祭りで評判だった露店の話」
「聞いたぞ。素晴らしい絵描きが絵を売っていたそうではないか」
「実際に行ったのだが、その露店を出していたのがあの元王だったぞ」
「元王が!?」
「確かに趣味で絵は描いていたが、まさか民に混じって露店を出すとは信じ難い」
「私も目を疑った。自ら売っている姿は、以前とはまるで別人のようだった」
城にいた頃の傲慢な人格から変わり果てたという青年の話に、元臣下たちは口々に驚いていた。
すると先王が、こんなことを言い出した。
「ならば、彼の評判を異邦に広めようではないか」
「これだけ評判なら、異邦でも通用しそうですが。しかし何故、我々が彼の為にそんなことを」
先王が言い出したことに、臣下の全員が眉を
「先日の会議で出た計画を、実行できるのではないか」
「あの計画をですか」
「元王には、絵の勉強の為に国外に出てもらうのだ。その方法なら、不自然ではないだろ」
「なるほど。強制的に国外に出す方法では、拒絶されかねない。
「彼の絵の腕は誰もが認める。彼の言葉を借りるなら、異邦に出しても恥ずかしくないものだ。プライドの高い彼なら、声をかけられれば必ず首を縦に振る筈だ」
「それなら、評判が広がった頃合いを見て、個展を開かせるのはどうでしょう。その時に、異邦から客をお招きしては?」
臣下の提案に、先王は一つ頷いた。眉を顰めていた他の臣下たちも、納得して
しかし、一人が言った。
「ですが、大丈夫でしょうか。異邦から人を呼ぶということは、
「問題ない。外交の際も全く疑っていなかっただろう。恐らく鈍いのだ」
「……そうだな。ならば、やりましょう」
その者も納得して首肯した。
「では、その手筈で進めよう。早速、取りかかろうではないか」
「私たちの未来の為に」
「
『全てを持つ者には、慈愛を注げ。そして恵みを分け与えてもらえるよう、疎外してはならない。』
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