同じ熱を持った人々

 なかなかがたいのいいおじさんに捕まった俺はその後路地に連れ込まれてボコボコにされました。


 ――と、いうことにはならず。むしろ――。


「いやーん。ゆうじろうちゃんも参加してたの!?それ私も参加していたのよー」

「そ、そうなんですか」

「そうよ。今日時間いい?いいわよね。せっかく新たな仲間を見つけたんだもの。歓迎会しないと。さあさあ」

「あっ、いやーー」

「遠慮しないで」

「あっ――はい」


 なかなかがたいのいいおじさん。名前を真弓まゆみさん(男)というらしい方に気に入られ。腕をがっちりつかまれ暗い路地を進んでいた。


 先ほど何が起こったか。それは俺の持っていたショルダーバッグに付いていたバッジに真弓さんが反応したのだ。

 何やら今のところちゃんとは聞けていないが。ざっくりわかったことを言うとどうやら真弓さん。この路地の奥で『鉄道模型喫茶まゆみ』というお店をしているらしい。とにかく鉄道が大好きらしい真弓さん。

 自身は鉄道模型から撮り鉄。乗り鉄なんでもしている人らしく。もちろん俺が持っていたバッジも知っており。どうやら真弓さんも皆勤賞の仲間らしく。同じものを持った同士を見つけた――というべきなのか。とにかく『鉄道好きに悪い人は居ないのよ!さあさあこれも何かの縁。私のお店にご招待ー』と、なったところである。


 ちなみに本当に路地の奥へ。奥へと進んでおり。明らかにやばい裏社会の場所のような場所へと入り込んでいる俺。


「さあさあここよー。ちょうど今日は集まりだから仲間も来てるのよー」

 

 すこし歩くと路地のホントどんつき。奥の奥という場所にちょっと明るい空間が現れた。

 そこは駅の看板などがあり。踏切の警報機が飾ってあったりと。ちょっとこれはこれで怪しい雰囲気――を出しているお店?だった。なお、ちゃんとドアのところには線路をモチーフにしたのだろう『鉄道模型喫茶まゆみ』と、ちゃんと書かれていた。

 ここは入っていい場所なのだろうか?と、俺が思っていると、先陣を切るようにカランカラン。と、音をたてながら真弓さんがドアを開ける。


「みんなおまたせー。それと良い報告よー!」


 そして真弓さんの隙間というのか。開いたドアからちらっと見えた店内は――どうやら鉄道模型のレイアウトが中心。カウンター?のところにあるみたいでちらっとしか中が見えなくてもインパクト大。といった感じでまず鉄道模型多分NゲージではなくHOゲージ?らしき鉄道模型がまず主張していた。

 ちなみに俺も模型は持っていないが。わかる子である。NやらHOが何かわからない人は検索してくれ。今俺は――語る余裕はなさそうだ。だって、何やら未知の世界へと引き込まれているのだから。


「ほらほら、ゆうじろうちゃん」


 ちなみに言い忘れていた気がするが。俺の名前は裕次郎である。親が昔好きだった俳優から取ったとか。って俺の自己紹介している暇でもないな。どうなるの俺?


 とりあえず逃げるという選択肢はなさそうだったので、店内へと入ると。俺以外に5、6人の人影がすでにカウンター席にあった。


「みんなー。新たな仲間ゲットしたわよー。そして聞いて、私と同じくイベント皆勤賞よー。すごい新人よ。さあさあゆうじろうちゃん。秘密の集まりにようこそー」

「――」


 いやいや、マジか。なんか俺とんでもないところに来てしまった。秘密の集まりってなんだよ。いや、なんか鉄道好きが集まっている喫茶のようにも見えなくはないが。いろいろと言いたいことというか。もうわからん。などと俺が思っていると。カウンター席に座っていた人たちが俺の方を見る。


 すでに席に座っていたのは。にこやかな表情をしている年配の男女が3人。あと学生のような雰囲気。すこし初々しさの男性2人が俺を見て軽く会釈。あとは俺と同じくらいの男性――。


「――って、伊勢田君?」

「あれ?えっ――どうしてここに」


 って、最後に俺と目が合った男性。まさかの伊勢田君だった。

 そういえば俺は伊勢田君の横顔を見たところで――などなど。思い出していると。ふとこちらを見た伊勢田君の手には鉄道模型があることに気が付いた――うん?つまりどういうことだ?などと俺が思っていると。


「あらあら?ゆうじろうちゃんといけっち知り合いだったの?まあ類は友を呼ぶわねー。さあさあとりあえず座って座って」


 真弓さんが嬉しそうに再度俺の方へと来て、背中を押してきた。


 何が起こったのか。俺はまだ何もわかっていなかったが。そのまま空いていた席に座らされた。隣には何とも言えない表情をしている伊勢田君。多分俺も似たような表情をしているだろう。


「さあさあ、みんな今日は報告会とゆうじろうちゃんの歓迎会よー」


 本来なら伊勢田君にいろいろ聞きたい場面。しかしここは真弓さんが大変強い。というか、めっちゃ仕切っていたので、俺と伊勢田君が話すという機会はかなり後のこととなる。


 とりあえず今俺がざっくりと言えることは――実は俺と伊勢田君。似た者同士というのか。同じ考えの人だったらしい。


 もしかして――伊勢田君も俺と同じで趣味のため給料の良い今の職場に居る?とか今すごく聞いてみたいのだが。しばらくは真弓さんが仕切りそうな雰囲気だったためその話が出来たんはすごくあと。

 そうそう、それと職場は職場。趣味は趣味という今まで通りの流れはその後も続いたと言っておこう。





 了

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冷めた男 くすのきさくら @yu24meteora

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