第6話 ここまでのテクニックをバラしてみましょう

 テクニック論だけを書いて説明し続けたら、きっと飽きるでしょうし、あなたに「テクニックだけで書くのは邪道だ!」と反発心が芽生えていたかもしれません。

 そうならないよう、わたしは本作の序盤からちょっとした仕込をしました。その仕込とは、


①”チーム犀川”という仲間意識を持ってもらうことで、わたしとあなたの距離を縮め、テクニック論の話を受け入れてもらいやすいようにした。

②あなたにわたしの語りを「実はのでは?」という疑問を持たれないよう、食べ物や生活シーンなどの別ドラマを展開させて、気を逸らしてきた。


 になります。どれだけの効果があったかはあなたの評価にお任せしますが、ここまで読んでもらえたのは、次に何があるだろうかというドラマ性と、その中にあなたも配役されているからであるからというのは間違ってはいないと思います。事実、専門論文のように、読んでいて眠たくはならなかったではないでしょうか。


 もちろん、わたしがテクニックに長けていると言いたいわけではありません。読者に読んでもらう工夫としてのテクニックがあることを知って頂ければと思って書いてみました。ネタをばらしながら手品するのもなかなか恥ずかしいものがありますが、笑って許してもらえれば幸いです。


 根性論で書く話も楽しいですが、テクニック論で書くのも悪くはありません。どちらであっても、最終的に読者が楽しんでくれればそれで良いかもしれないと、思うことがあるからです。

 というのも、わたしは常日頃、根性論で書いた作品を褒めてほしいと思っているのですが、テクニック論で書いた方が、悲しいかな、ウケや評価が高いのです。いち物書きとしてはジレンマを感じますが、これも現実として受けとめなければなりません。そういう意味で、やや諦め気味ながら、テクニックだけで書くことを否定できないのでした。


 これはわたしの持論中の持論ですが、アマチュア作家として大事なのは、書きたいことを好きに書くことです。テクニックなどは二次的なものでしかありませんが、それを究めようとするのもまた、面白い旅なのかもしれません。


 あなたが本作を通じて、話のリアルさやパッションのような根性論ではなく、テクニックによっても読者を惹きこむやり方があるのだなと思ってくれたのであれば、わたしにもまだ二流作家並みの創作力は残されているのだと安心できるのですが、いかがでしたでしょうか。(←こうやって、問いかけで終わることで、わたしがこれまでものすごい語りをしてきたのだなという読後感をあなたに与えるための、姑息なテクニックです)


おしまい


補足)今回ご紹介したテクニックのいくつかを使って書いた「(復刻版)穏やかな殺意」という私の作品がありまして、例題としてチラ見していただければと思います。(宣伝ではないです。あくまでもご参考までに)

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テクニック論みたいな創作論 犀川 よう @eowpihrfoiw

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