密やかな悪意。


 愛が冷めきった夫を殺すことにした。

 凶器は薬。手渡した友人によると「十回に分けて与えることで証拠を残さずに殺せる」のだという。

 十分の一ずつの殺人。殺人の達成に向かううちに、私は徐々に高揚していき……



 プロットもさることながら、文章から伝わる「冷たさ」が特徴的な本作。

 冷めきっている前提があるとはいえ、ここまで突き放した印象を与えられるとは。

 脱帽です。