第4話 キャラメル
家に帰ると、早速、袋の中からキャラメルをひとつとりだした。
ものすごく小さい。それにやわらかい。
透明のつつみがみをはがして、口に放り込んだ。
優しい甘さが口いっぱいにひろがっていく。
おいしい……!
でも、小さすぎるせいか、あっという間にとけてなくなった。
ものたりない。
だから、もうひとつ、……もうひとつ……。
気が付いた時には、袋はからっぽ。
とけてしまうのが早いキャラメルだけれど、体の中にたまっていたイライラも一緒にとけて消えてしまったよう。
だって、食べ終わって一番に思ったのは、ゆうすけのことだったから。
このキャラメル、ゆうすけにも食べさせてあげたいな……。
次の日。
祭日だから学校は休み。でも、僕は、早く、ゆうすけに謝りたくて、朝ごはんを食べたらすぐに家を飛び出した。
そうだ、あのお店に寄って、キャラメルを買っていこう!
確か、こっちの道だったよね……?
うろうろしながら、やっと、それらしき道にでた。
あった、あのお店だ!
でも、あんなに静かだったお店が、なんだかにぎやか。
入り口の扉が開け放たれ、色々な人たちが出入りしている。
何かあったのかな……?
あわてて駆けよった。
開け放たれた扉に昨日と同じく「時計屋」という看板はあるけれど、その下の「おかし、あります」という小さな張り紙はなかった。
中をのぞいていると、店の中からエプロンをした人がでてきた。
若い男の人だ。
僕は思い切って聞いてみた。
「あの、……ここにお菓子を買いに来たんですが、何かあったんですか?」
「お菓子を買いに? ここへ……?」
「はい、昨日ここで買ったキャラメルが美味しかったから。また、買いに来たんです」
男の人は首をかしげた。
「どこかと間違えてない? ここは、ぼくの祖母が時計屋をしていたんだけれど、店を閉めてからは、ずっと、空き家だったんだよ」
え……?
作業着を着た人が、店の中からでてきた。
「これらが中にあったものです。確認をお願いします」
そう言って、男の人に小さなダンボール箱を手渡すと、また、店の中へと入っていった。
ふたのあいたままの箱の中身が僕にも見えた。
「あっ……!?」
思わず声がでた。
だって、箱の中には、見覚えのあるものが入っていたから。
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