第5話 もしかして

 ダンボール箱の中には、ひもつきの小さなかごがあった。

 しかも、10円玉が沢山はいっている。


「このかごにキャラメル代の10円を入れたんです!」


「え……!? これ、祖母の手作りのかごだよ」


 男の人は驚いたように言った。


 かごの次にでてきたのは、サングラス。


「あ! そのサングラス! レジにいた小さなおばあさんが、かけてました!」


「……これも祖母のなんだ。大きくて、ちょっとかわった形で、気に入ってた。旅が大好きな人だったから、このサングラスをかけて、外国にも行ってたよ……」


 そして、最後にでてきたのは、明るい黄色のスカーフ。

 僕は驚いて息をのんだ。

 

「もしかして……、これも見たことがある?」


 男の人は、ぼくに聞いてきた。


「はい、それを頭と顔にまいてたんです。大きなサングラスもしてるから、顔は全然わからなくて……。それも、おばあさんのものなんですか?」


 男の人はうなずいた。


「黄色が好きな人でね。このスカーフは特にお気に入りだったから、しょっちゅう首にまいていたよ。でもな……、いや、それはないよな……」


 ぶつぶつと言いながら、考えこんだ男の人。


 ふと、僕の頭に、怖いことがうかんできた。

 確認するのは怖いけれど、確認しないと、それもまた気持ち悪い。


「あの、……もしかして……、僕が見たのは、おばあさんの……幽霊……なんでしょうか?」

と、恐る恐る聞いてみた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る