第6話 写真

 怖がる僕を見て、男の人はフッと笑った。


「いや、それはない。僕のおばあちゃんは幽霊になってまで働いたりしないよ。死んだら、行ってみたい国に飛んで行くんだって、言ってたからね。それに、さっき、小さいおばあさんって言ったよね? でも、この時代の人にしたら、すごく背が高いんだ。……ああ、ほら、こんな感じの人だったから」


 ダンボール箱の中から一枚の写真を取り出して、見せてくれた。


 写真には、すらっとした女の人がうつっていた。

 黄色のスカーフを颯爽と首にまき、サングラスをかっこよくかけている。


 確かに、昨日、見た小さなおばあさんとは全然違う。

 

 その女の人の足元には、灰色の大きな猫が座っていた。

 

 ん……? 

 なんだか、このシルエット、見覚えが……。

 

 あっ! 昨日見た、小さなおばあさんに似てるんだ。


 でも、猫だよ? ありえない。

 あのおばあさん、しゃべってたじゃないか……。


 僕がじっと写真を見ていると、男の人がのぞきこんできた。


「ああ、これはハチ。おばあちゃんが飼ってたんだ」

と、猫を指差した。

 

 ありえないと思いつつ、僕は頭の中で、この猫にスカーフをまき、サングラスをかけさせてみた。

 やっぱり、似てる……。


 薄暗くて、ぼんやりとしか見えなかったけれど、灰色の服を着ていると思ったのは、灰色の毛だったと思うと、全てがしっくりきた。


「あの、この猫、……じゃなくて、ハチ。今、どうしてるんですか?」

と、聞いてみた。


「それが、おばあちゃんが死んだ時にいなくなったんだ」


 うーん……、ありえないけれど、言わずにはいられない。

 

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