第3話 サービスひん

 紙袋の中身は……ん? なんだろう? 

 小さくて茶色くて四角いものが、透明のビニールでひとつずつ、くるまれている。


「もしかして、キャラメル……?」

 

 思わず声にでた。


「そう。ひとふくろ、10円。サービスひん」


 いきなり声が聞こえてきて、とびあがった。


 びっくりした! お店の人だよね?

 あたりを見まわしたけれど姿は見えない。


「おいしいんですか?」


 声が聞こえてきた店の奥の方にむかって、聞いてみた。


「とってもおいしいゴロ」

 

 ゴロ? 聞き間違いだよね。

 ま、10円ならすごく安いし、このキャラメルを買ってみよう。


 紙袋を持って、店の奥に行くと、頭上から、カタンと音がした。


 見ると、とっても小さなおばあさんがちょこんと座っているのが見えた。

 僕の位置からは見上げる感じだ。


 薄暗い中、目をこらすと、小さなおばあさんは顔の半分以上ありそうな大きなサングラスをして、明るい黄色のスカーフで頭と顔をおおっていた。

 首から下は更にぼんやりとしか見えないけれど、どうやら、全身、灰色の服を着ているみたい。


 なんというか独特の雰囲気だ。

 

 お金を払うために、おばあさんのところまであがっていく階段を探してきょろきょろしていると、目の前に、するするすると、ひもつきの小さなかごがおりてきた。

 

 あ、もしかして、ここにお金を入れるのかな?

 

 とりあえず、かごの中に10円玉をいれてみた。

 今度は、するするすると、かごがのぼっていく。


 上から声がした。


「まいど、ゴロロ」


 ゴロロって、なに!?

 

 びっくりして見上げると、もう、そこには誰もいなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る