時計屋

水無月 あん

第1話 時計屋

 僕は、親友のゆうすけの家を飛び出した。


 一緒にゲームをしていたけど、ゆうすけの言い方にカチンときて、けんかをしてしまったから。

 僕が先に謝るのもいやだし……。 


 イライラしながら帰っていると、いつもとは違う道にでてしまった。

 細くて知らない道に不安になって、あたりをきょろきょろと見回してみる。


 すると、遠くのほうに見慣れた大通りがちょっぴり見えていることに気がついた。


 あ、ここを通り抜ければいいんだ!


 ほっとして歩きだすと、古い木造の小さなお店が見えてきた。


 近づいてみると、ショーウィンドーには、置時計がひとつだけ、ぽつんとあった。

 青い時計だけれど、色はくすんでいて、なんだか古そう。

 時間は8時でとまっていた。

 

 なんのお店だろう?


 入口の扉を見ると、「時計屋」と書いた木の看板がかかってあった。

 が、その下に、小さな張り紙がしてあり、「おかし、あります」と書いてある。


 時計屋なのに、お菓子? ここで売ってるの?


 そう思ったら、無性に甘いものが食べたくなった。 

 けんかをして、腹がたっているからかも。


 木の扉は少しだけ開いている。

 中をのぞいてみたけれど、暗くてよく見えない。


 でも、いい匂いがする!


 甘い匂いにつられて、僕は、お店の中へと足をふみいれた。

 

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