概要
枯れた曼珠沙華の花弁は波紋だ。
「僕」は、命を落とす者の最期の瞬間の言葉を理解できる能力を持つ。人間、動物、あるいは植物までも。生きた事実のある者たちの言葉は息絶える瞬間、彼の内側へと伝播し、そして彼自身の脳内に蔓延るのだという。 幼き頃、夏休みを目前とし浮かれた生徒たちを達観するように、小学校の校庭で一羽の鳥が死んでいた。小さな雀だった。狭い楕円の校庭の端、簡易的に設置されたフェンスの下で息絶えた雀が転がっている。一人のクラスメイトが見つけて悲鳴をあげると、吸い寄せられるように野次馬が集まり、野次馬と共にやってきた担任もこの鳥は老衰なのだと死んだ鳥に脅えて生徒に説いた。 そこに投じた僕の一言は淀みの一石となる。 「その鳥、殺されたんじゃないの」
その能力は果たして、誰かを救うか、巣食うか。
その能力は果たして、誰かを救うか、巣食うか。
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