第6話・ともだち

「玲一郎は当時では珍しい病気でな。あれよと言う間に体を悪くして入院して、次に家に帰れたのは死んだ後だった。解剖させてくれと医者から頼まれたが、母さんは全部突っ撥ねて普通に葬式を出したんだよ」


 じいちゃんが兄を語る時は、どこか寂しそうだ。

 今まで仏間には何度も出入りしてたのに、若い遺影があることにすら僕は気付いてなかった。


「玲司は若い時のおれに似とる」


 祖父の若い頃に生き写しだと、祖母や親戚に何度言われたか分からない。でも、今日は何故か腑に落ちた。だから彼は一緒に遊んでくれたのだ、と。






「なあ、今日は遊べる?」


 帰り道。いつもは強引に誘ってくる友だちが、どこか控えめに尋ねてきた。最近ずっと遊びを断り続けたせいで自信を失いかけているようだった。


 あれから何度森の拠点に行っても、玲一郎には会えなかった。たまたま昔と空間が繋がって、死ぬ前の元気だった玲一郎と言葉を交わしたのかもしれない。幽霊となった玲一郎がまだ家の周りを彷徨っていて、たまたま波長が合って姿が見えただけかもしれない。

 でも、確かに彼はあそこにいた。


「なあ玲司。玲司が来ないとつまんないよ」


 とうとう友だちは半泣きで僕の腕に縋りついてきた。強気な態度を取る癖に他人から拒絶されることに慣れていない。こんなだから友だちをやめるほど嫌いにはなれないのだ。


「いいよ、わかった。今日は一緒に遊ぼう」

「マジで!?」

「ランドセル置いたらウチに来て。特別に秘密の場所を教えてあげる」






『森は僕らの遊び場』完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

森は僕らの遊び場 みやこのじょう @miyakonojyo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ