誰かを急かし、呼び寄せる、言の葉

 ホラー作家である牧野周二がネタ探しの中で仕入れた3つの小話、そこには不可思議な共通項があった。どれも少し恐いだけの体験談でありながら、かならず公園という場所が登場し、「ハヤク……オマエモ……コッチニコイ……」の言葉で締めくくられるという共通項が。そのことに興味を惹かれた周二は、3人の話の舞台である土地へと向かう。

 注目していただきたいのは構成という名の仕掛け。1〜3話は別々の誰かの語りをそのまま書き起こしたものなのですが、基本的に段落分けされておらず読みにくい。でも、この“そのまま感”がリアリティをいや増し、4話めで登場する主人公の周二さんによる考察をもって、他愛なさの奥に潜む恐怖の気配を浮き彫りにするのです。外連味に頼ることなく静々と盛り上げていく展開、目を奪われずにいられません。

 かくて周二さんは向かった先でひとつの真実に気づくのですが……顛末を見届けた後、ぜひ前の3話を読み返してみてください。きっと初見とは違う感想と感慨を味わえますから。



(「恐怖へ迫るドキュメンタリー=モキュメンタリー」4選/文=高橋剛)