愛猫家のダンジョン探索記
愛猫家X
プロローグ
西暦2022年日本時間11月11日(土)の深夜1時、全ての人類は不可思議な現象に遭遇した。
活動中の人々は白昼夢のように、睡眠中の人々は夢を見るように、其れは現実時間では一瞬の出来事であったが、人類史上最も重要な出来事になった。
ある日の深夜、自室のソファでTVをホラー映画を観ながら胡座をかき膝の上に乗っている黒白のハチワレ猫を撫でる男がいた。
男の名前は、猫塚大地。現在22歳で無職、2LDKのアパートに1人と愛猫3匹で暮らしている。
普段は自動車工場の派遣で生計を立てているが現在は職場を変えるために退職して失業手当を受給して生活している。
特に前の職場に不満があった訳でも体を壊した訳でもない。
無料の寮や家賃補助の支給、光熱費、水道料金無料、社会保険などの福利厚生もしっかりしているし、さらに高時給で多くの自動車メーカーでは期間工や派遣工と呼ばれる者たちに対して雇用期間毎に入社祝い金や契約満了金と呼ばれるボーナスのようなものを支給していて、年収も500万円後半もある。
派遣工の場合は一年と少し働けばそのボーナスが満額貰えるので、そのタイミングで退職する場合が多い。さらに失業保険も一年以上加入しているため失業手当も支給される。
そんな生活を19歳の時から3年以上続け資産運用も積極的に行っていたので、純金融資産は1000万円近くある。
何故そんな生活をしているのかというと、最近流行りのFIREを目指しているからだ、投資をしている人からすれば常識だが複利の力は偉大なのだ。若い内に始めれば始めるほど有利になる。
お金が有ればFIREまで行かなくともセミリタイヤなどの選択肢も取れる。
そうして自由時間を増やして愛する猫達との至福の時間を少しでも永く味わいたいのだ。
猫の平均寿命は種類によるが人間の4分の1から5分の1程だ。つまり猫と過ごす時間は人と過ごす時間の4、5倍は価値がある。そんな限りある大切な時間を仕事なんかに盗られるのは許せないのだ。
だから自分も猫も若いうちに稼げるだけ稼いでしまいたいと思うのは自然だろう。
そんなこんなで今に至るのだ。
大地は猫を撫でながら考えていたこの時間がいつまでも続けばいいのにと。
撫でているハチワレ猫のネコ助の喉からは
「ゴロゴロ」
と音がしている。
ソファの背もたれにはキジ白猫のミミ、ベンガル猫のルリが香箱座りで寛いでいる。
映画を観ながら長時間膝にネコ助を乗せていたのでじわじわと足の痺れが襲って来た。
「ネコ助ごめんな〜」
と言いながら膝の上に座るネコ助を抱き上げソファに移動させリモコンを操作し映画を一時停止する。ソファから立ち上がると、テーブルに置いていたスマホで時間を確認する。
0時59分となっていた。
無職という事もあって不規則な生活が続いており日夜逆転生活を送っている大地はそろそろ食事にしようと考え、冷蔵庫の前に移動し冷凍庫から冷凍パスタを取り出す。
その時だった、視界が一瞬ホワイトアウトしたかと思うと、大地は見知らぬ石造りの遺跡の様な場所に立っていた。
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