1日目③
その投稿によると、夜食を買いにコンビニに買い物に行った帰り道の途中に例の空間に飛ばされ、意識が戻ると、行きにも通った見慣れた道の脇にある雑木林があったはずの場合には、切り抜かれた様に開けた空間が出来ており、その中心に今まで存在しなかった建造物が出来ている事に気が付き、普段からアニメやファンタジー小説を趣味にしている投稿者は直ぐにこれが例のダンジョンである気付き、好奇心から謎の建造物の中に入ったらしい。
そこからは某動画投稿サイトのリンクが貼り付けらていて、そのリンクをタップするとスマホのカメラを使いダンジョン内を撮影したと思われる映像が載せてられていた。
内側は外見通りコンビニ程の広さになっていて、奥の壁の中央部は白く輝く靄がかかって降り、その靄の向こうには本来壁かるはずだが、薄っすらと通路が続いているのが見える。
「こ、これから、ダンジョンに入ります。」
投稿者は緊張からか声が震えているが、その声からは興奮も感じ取ることが出来る。
白い靄に近づき右手で靄に触れる。
すると右手は靄を通り抜ける。
数度右手で確かめるように宙を掻き、そのまま通過を通り抜けた。
靄の向こう側は石造りの通路になっていた。
壁は長方形の石が積み重なって出来ていて、上部は一定間隔で淡く光る石の様な物が石の代わりに積まれている。
薄暗いが視界は良好の様だ。
入口から5mほどの場所は開けた空間が見えている。
中央には台座の様な物がある。
投稿者は台座に向かい歩いて行く。
台座の上にはメイスと銀色の指輪が置かれている。
投稿者は右手に指輪を持ちスマホを持っている手に指輪を通す。
「この指輪には幾つか物を収納出来るみたいです!
ゲームのイベントリみたいな感じかな?」
投稿者は左腕に下げていたコンビニの袋を右手に持ちカメラに移る位置に移動させる。
「試しにコンビニ袋を収納して見ます!」
するとコンビニ袋は一瞬の内に消えた。
「次は取り出して見ます!」
今度は一瞬の内に右手にコンビニ袋が下げられていた。
「出し入れにはそれぞれ1MPを使用するみたいです!」
投稿者はコンビニ袋を再び収納する。
そして今度はメイスを持つ。
「こっちの鉄のメイスは見た目通りの鉄で出来たメイス見たいです!」
投稿者は右手にメイスを持ち暫く、慣らすようにメイスを振っている。
「クラスは初級魔法使いなのですが、前状況によれば、詠唱や杖は必要無いみたいなのでこれが暫くのメインウェポンと言うことなんでしょうか?」
そう言いながら、スマホのカメラを前に向け、周囲を映す。
通路は入口を含めれば十字路になっており、これから取れる選択肢は、入口に戻るか、左右か直進コースの4つしか無い。
「取り敢えずこのまま真っ直ぐ進んで見ようと思います。」
右手にメイスを持ちながら投稿者は歩き出す。
歩いて暫くすると、前方から小さな人影が走りながらこちらに向かって来るのが見える。
その人影は人にはあり得ない緑色の肌に醜悪な顔をしており粗末な腰巻をしていて、手には木で出来た棍棒を持っている。
まんまゲームやファンタジー小説に登場するゴブリンだ。
「あ、あれは⁉︎ゴブリンですかね?」
投稿者は焦りながら話す。
「ヤバい、ヤバいっ、ヤバいっ⁉︎」
投稿者はメイスを収納し、こちらに向かって来るゴブリンに右手を向ける。
投稿者とゴブリンの間には5m程の距離しか無い。
右手から炎の球が飛び出す。
炎の球はゴブリンの頭に直撃する。
「グギャー⁉︎」
ゴブリンはその場に仰向けに転倒し、顔を手で押さえジタバタと藻搔いている。
投稿者はすかさずゴブリンに近づき収納したメイスを右手に持ち何度もゴブリンに振り翳す。
ドスッ ドスッ ドスッ
周囲に飛び散った血は赤色だ。
暫くするとゴブリンは黒い煙になり消えた。
ゴブリンの存在していた場所は血の跡も無く、木で出来た棍棒だけが残されていた。
「ハァ、ハァ、何とかゴブリンを倒すことが出来ました。」
「この棍棒はドロップ品ってやつですかね?
取り敢えず、収納しておきます。」
投稿者の声の調子からすると、生まれて初めて行うであろう命が掛かった戦闘行為にかなり動揺している様だ。
「一旦、外に戻って休憩します。」
そこで映像は終わった。
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