1日目⑦

初めてのボス戦ということもあって、緊張した面持ちで扉に手を掛ける。

見上げるほど大きく重厚そうに見える石造りの扉なので開くか心配になるが、その心配は要らなかった。

指が触れた瞬間に重低音を響かせながら、1人でにゆっくり開いていく。


扉が開いた先にはやたらと天井の高い円形の空間があった。

部屋を構成している壁や床はダンジョンの通路と変わらない様に見える。

そしてその中央に当たる場所には、筋肉質で身長2mほどの巨体を誇る、嫌に厳つい顔をした緑色の肌の鬼の様なモンスターが少し俯いて立っていた。

武器は両手持ちの長剣だ。

すかさず鑑定を使う。


名前:無し

種族:ホブゴブリン(階層主)

性別:♂

レベル:3


現在の鑑定ではこの位の情報しか得ることは出来ないが、この情報だけでも十分に強敵だという事が分かる。

身体能力は確実に敵に軍配が上がるだろう。

バックラーを前に構えて、ゆっくりと敵に近づく。

体格差のせいで慣れたものになりつつある盾でうけてからの首元への反撃という、必勝パターンは難しそうだ。

首元以外の弱点は人間を基準にするなら、失血死を狙えそうな、心臓、脇の下、腎臓、肝臓、太腿などがあるが、臓器に関しては学校の授業で習ったくらいの知識しか無いので正確な位置を攻撃するのは難しいだろう。

そもそもモンスターに臓器があるのかすら分からない。

ただゴブリンの首元への攻撃が有効だった事から、身体構造自体は似ていると思いたい。

無事ボブゴブリンを討伐出来たらゴブリンを使って実験する事に決めた。

ボブゴブリンもこちらに顔を向け長剣を前に構えながらこちらに向かって来る。

お互いの距離が3m程になった段階で大地は歩みを止める。

初撃はボブゴブリンに譲ることにした。

ボブゴブリンはゆっくりとこちらに近づきながら、前に構えた長剣を真上に振り上げ、そのまま振り下ろす。

大地は長剣のスピードが乗り切ってない振り下ろして直ぐのタイミングで剣をバックラーで受け流す。


ガキンッ


金属同士が衝突する嫌な音が響く。

今までで1番の衝撃が大地の身体に走るが、大地はがら空きになった上半身では無く、左の太腿目掛けて横向きに斬撃強化を使用した剣撃を放った。


『グオォォォォー』


ホブゴブリンは痛みからか怒りからかは分からないが雄叫びをあげる。

斬撃強化を使用した剣撃の威力は思った以上で、左太腿どころか、右太腿まで深く傷付ける事に成功していた。

すかさず大地はホブゴブリンから距離を置く。

ホブゴブリンは長剣を手放し、両膝を床に着き本能的なものか、止血の方法を理解しているのかは分からないが、両手で傷口を圧迫するように押さえている。

もしやと思い、ホブゴブリンの太腿からの出血量を観察するが、余り変わりは無い。

少なくともホブゴブリンには再生能力などのファンタジー的な回復手段は無い様だ。

それならば最早放置プレイでも、いずれは失血死する可能性は高いだろう。

だがそんな余分な時間は大地にはない。

ここぞとばかりに大地は剣を構えながら全力ダッシュでホブゴブリンに近づく。

そのまま真上に短剣を構えて斬撃強化を使用した剣撃を放つ、ホブゴブリンは大地の咄嗟の行動に、頭の前で両手をクロスし防御する。

短剣はそのままホブゴブリンの左の前腕を切断し、右腕にもかなり深く食い込んだ。

大地は素早く短剣を引き抜き、短剣を逆手に持ち替えそのまま、ホブゴブリンの首筋に突き刺し、グリグリと抉る。

首筋から吹き出た血液が大地の手を汚す。

満身創痍のホブゴブリンは抵抗する事も出来ずに血液すら残さず黒い煙になって消えた。

残されたのはドロップ品と思われる、長剣と小指の先ほどの小さな魔石だけだった。




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愛猫家のダンジョン探索記 愛猫家X @nekogami0523

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