1日目①
周りを見回してみる。
不思議と天井付近が発光していて視界は良好だ。
後ろは壁になっていて前方にしか進めない。
服装は部屋着にしているダークグレイのスウェットのままだ。
前方に開けた空間があり黒いモノリスの様な横1メートル縦2メートル程の長方形の板がある。
取り敢えず前に進む事しかできない様なので板を目指して進む。
板の前まで辿り着くが板があるだけで周りには壁しかない。
板はぽっかりと空間に穴が空いていると錯覚する程に真っ黒だった。
ふと引き寄せられる様に板に触れる。
すると頭の中に様々な情報が流れ込んで来た。
『スキル:ステータス閲覧を入手しました。』
突然の事で驚きそうなものだが、不思議と冷静さを保てていた。
名前:猫塚大地
種族:人間
性別:♂
クラス:『選択可』
レベル:1
MP:100/100
筋力:10
魔力:10
持久力:10
耐久力:10
敏捷:10
スキル:『ステータス閲覧』、『2つ選択可』
SP:なし
ゲームやファンタジー作品でお馴染みのステータス画面に多少興奮するが与えられた情報によると今からクラスとスキルを2つ選択しなければならないらしい。
この選択に今後の生活が関わると思うと、気を引き締めなければならない。
その前にこれからの世界の情報を簡潔に整理しようと思う。
まずは1番大切な事だが誰が今自分が見舞われいるこの不可思議な現象を発生させたのかと言う事だろう。
簡潔言ってしまえば『神』とでも言うべき存在だった。
地球で信仰されている様な神ではなくもっと宇宙の根源に関わる様な極めて強大な存在だ。
何故この様な荒唐無稽な事をすんなり信じる事が出来るのかは分からないが、何故かすんなり信じる事が出来た。
そう言えば普段の自分に比べて妙に落ちついている気がするがこれも神様パワーなら納得が出来る。
その次に重要な情報だがこれから地球に魔力とダンジョンが発生するらしい。
その訳についてだか、我々地球人による環境汚染や貧富の差の拡大、武力行使を伴なう世界情勢の悪化、パンデミックによる世界経済の悪化などの不穏因子が重なりすぎたせいで人類による地球滅亡への可能性が芽生えてしまったらしい。
形あるものがいつか壊れる様に、地球もいつかは滅びるだろうと思ったのだが、神様的には折角芽生えた生命豊かな地球が滅びるのは見逃せない様だ。
ならば人間だけ神様パワーで消してしまえば良いのではないかとも思ったのだか、なんと特定の生物だけを取り除くのは神様のルールで禁止されているらしい。
地球上の生物全てで一つの生命体と見做している様だ。
そこで地球上に新しく魔力というルールを追加して様子見をするらしい。
ちなみにこれが最初で最後の干渉になるみたいだ。
なんと神様はテラリウムの様に世界を創造し、その世界を観賞しているらしい。
神様からすれば地球も数ある観賞対象にすぎない様だが多様性を重んじている為、なんだかんだ地球には神の代理とでもいうべき管理者を残していき、以後はその管理者が創り出すシステムに一定の制限内で地球の管理を任せる様だ。
どの様な結果になっても、観察対象が無くなってしまうよりは良いだろうし。
その管理者が現代社会の趣味嗜好を参考にして創り上げたシステムのメインがダンジョンらしい。
ダンジョンは神話や様々な物語に影響を受けているそうなので若い世代の人間なんかは割と直ぐ適応する事が出来るだろう。
最後にダンジョンと魔力についての情報を整理しようと思う。
まず先に魔力についてだが、なんと魔力は完全なクリーンエネルギーだと言う事だ。
今、分かる事は其れだけだ。
後は頭の良い学者さんが調べてくれるだろう。
次にダンジョンについてだがこれは、とんでもない代物だ。
15歳になるとモノリスの様な板があるこの空間に意識だけが飛ばされてクラスやスキルを入手出来る様になるらしい。
現時点で15歳に満たないものは、再度この場に来る事が出来る様だ。
ダンジョン内ではゲームやファンタジー作品に登場する様なモンスターが存在していて、そのモンスターを倒す事で様々な資源やアイテムを獲得出来る様になっている様だ。
例を挙げると、魔石や食料、武器や防具、様々な効能のある薬品やダンジョン探索を有利に進めるためのアイテムなど様々だ。
特に魔石は非常に便利で様々な属性を帯びているものがある、例えば火の魔石なんかは水に入れるだけでお湯が沸かせるので日常生活だけではなく発電にも使えるだろう。
食料も入手出来るのはかなり嬉しい。
なんせダンジョンの初期発生数は人口によって変わるらしい。
つまりはどの国においても今後はある程度のエネルギーや食料の自給自足が可能になるかもしれないということだ。
ちなみにダンジョンの発生数やアイテムのドロップ率は段階的に増えるみたいなので暫くは経済活動には余り影響はないだろう。
神様もそこは配慮したみたいだ。
それでもいずれは殆どダンジョン産に置き換わって行くのだろう。
段階的にある程度はダンジョン資源に置き換わり、最終的な目標は、エネルギーのクリーン化と環境の再生、そして人類同士の争いを減らす事だからだ。
そして忘れてはいけないのはダンジョンは地球人に恩恵を与えるだけではないと言う事だ。
ダンジョンにはもう一つの側面があるそれは人類の人口の管理だ。
ダンジョン内でモンスターと戦うと言う事は、勿論死亡のリスクは付き纏う。
ダンジョンは地下に伸びる階層式になっていて下に潜れば潜るほどモンスターは強くなるので、リスクは高くなるが、それに比例するように、ドロップするアイテムの質も高くなりリターンも上がる。
リスクを恐れてダンジョン探索を怠ると一定の段階でがダンジョン侵食と言われる現象が起き、モンスターがダンジョン外に発生するようになる。
そうすれば少なからず死者は出てしまうだろ。
ダンジョン侵食までのタイムリミットはダンジョン周囲の人口に比例する為、人口は暫くは右肩下がりに成る様に調整されている様だ。
ダンジョン外では魔力濃度の関係でステータスやスキルは制限を受けるようなので暴徒などの心配は余りしないで良さそうだ。
そしてダンジョン発生後の地球では核兵器などの大規模破壊兵器の行使は管理者からの罰則の対象になる様だ。
罰則の内容は分からない。
もう一つ忘れてはいけない事がある。
ダンジョン内での活動時間は地上の1/3の時間となっていて内部にいる限りは老化も1/3になるとの事だ。
この時間差はダンジョン発生から3年間のみで、社会のダンジョンへの適応期間としての神様からの計らいらしい。
まだまだ与えられた情報は多いが一旦、クラスとスキル選択に移ろうと思う。
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