BL要素あり!ヒトコワあり!怨霊ありあり!!

今作は、鋏池穏美(つかいけ やすみ)さまの描かれるホラーによく登場する、眼鏡男子の佐伯鷹臣(さえき たかおみ)のほか、複数名の人物たちと『伽藍胴殺人事件』の関わりを、奥戸雪人(おくど ゆきひと)の手記によって語られております。

ジャンルは、ホラーミステリーにサイコサスペンスの要素もある、不気味な長編作品でした。

読み進めるにつれ、『伽藍胴殺人事件』のあらましが視えてきますが、そこにあるのは、性の歪みや、近親相姦、猟奇殺人に発展する偏執的な病理まで、人間のドス黒い感情がありありと描かれており、それこそが、今作の最もグロテスクな面です。

しかし、それにとどまらず、鋏池先生の真骨頂である、心霊ホラーも描かれいるところが魅力的でした。

ホラー好きにも、サスペンス好きにも楽しめる、内容となっており、作中の奇怪な内容は江戸川乱歩や、夢野久作のおどろおどろしさにも通じるものを感じました。

BL要素もありますが、グロテスクなシーンも含めて、掲載サイトがカクヨムということもあり、マイルドな描写にとどまっております。

想像の余地が膨らみますが、残酷なシーンが直接的に描かれていないのは、ある意味、救いかもしれません。

今作の一番の見どころは、発端も含めた事件の全容と、そこにふつふつと湧き上がる、生き霊のような人間たちの"歪な性”です。

が、救いもあります。
最後まで読了したあかつきには、夜明けの光のようなうっすらとした希望が見えてくるはずです。

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