伽藍の悪魔
鋏池 穏美
はじめに
私は今、この文章を書きながら震えている。あまりにも
駆け出しの作家である私が当事者となった事件である。当事者──とは言ったが、果たして私は全てを理解することが出来ているのだろうか。多くの人間の欲が絡み合い、
私はこれまで何度か非現実的な
そして私は今、震えているのだ。当事者だが何も知らず、かといって全てを知ってしまったが故に囚われてしまった私。初めはこの事件を文章に起こそうなどとは思っていなかった。もちろん起こした文章を発表するつもりも毛頭ない。
どう文章をこねくり回したところで、悪趣味な作品となってしまう。また、残された遺族の方々のためにも発表すべきではないと思っている。証拠も揃い、犯人も捕まった。自白もあり、
この事件を世に知らしめた、
私には書けない。書くことが出来ない。人はこれほどまでに醜くなれるものだろうかと、総毛立つ思いである。だが書かなければならないのだ。書かなければ私はおかしくなってしまう。
今も私の耳元では──
かいて……
わたしと
──と、狂った女の声がする。
果たして私はこの物語を書き終えることが出来るのだろうか。だが書かなければ。書くことをやめ、パソコンの電源を落としてしまえば……
真っ暗になった画面に
何故私なのかは分からないが、私は選ばれてしまったようだ。いつか私の友人が言っていた「本来、怪異とはそういったものです。意味もなく、訳もなく祟る──」という言葉。
私の背後で
これから書き記す物語──文章は、ほとんどが私が体験していない出来事だ。世に溢れるゴシップ記事や警察関係者、ならびに友人から知り得た情報。そして──
耳元で
これで
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