奥戸雪人/全6話
第1話 奥戸雪人 1
──二〇一六年九月、東京
静かな室内に、かたかたとキーボードを打つ音が響く。それは脳内で構築された物語を、眼前のディスプレイに刻み込む不規則なリズム。と同時に、このキーボードを打つ男性にとっては、規則的な生活習慣に組み込まれつつあるリズムでもある。
男性──と表現はしたが、ノートパソコンに向かい合っているのは栗色のボブカットにくりっとした二重、華奢な体に白い肌、一見して女性を思わせる中性的な魅力を漂わせた男性だ。
ちゃんとレンズは僕の視力に合わせたけどね──
最後の一文を打ち終えた男性が
「……なんとかなりませんか? その
今しがた文章を書き終えた男性の後ろから、これまた男性の声が上がる。
「相変わらず
「僕にとって
「終わったんなら原稿見せてください」と、
「だ、だからいつも近いんだって! 俺の肩に手を乗せる意味を教えてくれ!」
「どうしたんですか
そんな挙動不審な
美しい。
見入ってしまうのだ。
美しい外見に。
魅入ってしまうのだ。
己の心が。
そんな心の内を悟られまいと、
「まったくしょうがないですね。
そう言って
間もなく寝室のベッドへぽすんと落とされた。もちろん
「だ、だから俺にその気はないって何度も──」
ベッドの上で瞳を潤ませた
「……その気はないと言いながら、ここは素直なんですね?」
「それにしても
「僕は整った外見が好きなんです」と言って、
快楽の沼へとずぶずぶ沈めていった。
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