知らず森の唄

「ババ様……!」

 盲目の少女はパチパチと燃える火の粉の前で声を上げた。


「シシよ。……視えたか」

「はい。断片的にですが……」

「――して、この村に災いは来るのか?」


「……この辺りが一面赤く染まるのが視えました」

 少女の声に周囲のどよめきが走る。

「それはいつじゃ?いつ来るんじゃ?」

「それは……」

 

 娘は黙った。視えた光景はいつ来るか分からない。明日か明後日か、それとも何十年も先か。

 

「ババ様、ごめんなさい。そこまでは、視えなかった……」

「仕方がない。ならばもう少し詳しく聞かせてくれるか?」

「ええ。黒いものが、こちらに向かってすごい速さで来るの。何か……、ぶつかった、いえ、急に火を吹くのよ」

「なんじゃろうな、それは」

「なんだかをしていたような……。あったわ、気味が悪い」

「怪物か、神の使いか。ワシらは何か怒らせてしまったのかもしれん……」

「どうしよう、ババ様。いつ来るか分からないなら、皆のことを助けようがない……」

 

 村の者たちが絶望に打ちひしがれていたその時だった。

 村のある一人の少年が言った。


「ある……。ひとつだけ方法がある……!」

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