予言

「災難だったね……」

 駆けつけた上司と妻が心配そうな顔でベッドの横にいる。


 相田あいだが目を覚ましたときには病院だった。

 一命は取り留めたが、痛みと火傷で暫くは安静にしていないとダメだと医師に言われてしまった。

 

 面会時間は15分。このご時世、病院はまだ感染対策が厳しいらしい。ようやっと会えて、話したいこともあったが15分では足りない。


「しっかり回復させて。でも無理はしないで」

 名残惜しい顔で妻が言う。

「……うん。香織かおりもな」


 2人が去り、静かになった部屋で相田はテレビを付けた。動けない身体としてはスマホかテレビくらいしか暇をつぶせるものがない。比較的自由がきく右手でリモコンのスイッチを押す。


「――続いてのニュースです。3日前に起きた東京都Y市の流文村りゅうぶみむらにある森林の火災ですが、鎮火してから一夜が明けました。現場から三野みのレポーターです」


 ここ最近は大きなニュースもなく、小さな村で起きたこの出来事を様々なニュース番組が執拗しつように取り上げていた。

 あのあとあの森は、日をまたいで燃え続けた。住民はみな避難し、幸いにも怪我人は自分一人だけだったようだ。


 ニュースは続く。

 三野と呼ばれたレポーターが現場から話しかけている。


「火災があった現場はこの先の森林です」

 声とともに黒焦げになった木々が映し出される。

 知らずの森はもう森とよべるものではなく、数本の焦げた木々が細々と立っているだけだった。


「今はまだ煙が残っているため、少し離れたところでお伝えしています。現場近くの人によると――」

 レポーターはそこで一度コメントを中断した。

「あっ、今、最新情報が入りました!先ほど現場に黒い破片、プラスチックでしょうか、黒い破片が散らばっていたそうです。えー、一体なんの破片でしょうか。詳細が分かり次第またお伝えします」


 黒い、プラスチック……?

 

『まわる まわるよ 黒いとり』

 ふと、あの唄が頭をよぎった。 


 再びスタジオが映し出される。それから5分も経たないうちだった。


「――速報です。先ほどお伝えした、村の火災ですが、犯人と思われる男がたった今、自首をしてきたとの情報が入りました。調べによると犯人は、『。実験のつもりだった』と供述。繰り返します――」


『龍のごとく火を吹いて』


『扇のごとく風を起こし』


「そうか……。そうだったのか……」


 “黒いとり”というのは——。


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