概要
やあやあ、ぼっちゃん。こんなところへ一人っきりで来るなんてね。
酔宵祭すいよいさいの鐘が鳴っている。提灯がずらりと並んで神社へ向かう道を照らしている。そこを行くのは獣か、妖怪か、それとも何者か。トオリは行く者の間を縫って尻尾をパタパタさせながら歩いていきます。いや、ちょっと小走りかも知れません。ポシェットを一つ身につけて、小さな手でそれをポンと叩く。今夜は酔宵祭だからとトオリの母親がポシェットにお金を入れてくれていました。トオリは立ち止まってポシェットを眺めては口元を緩ませます。ポシェットには硬貨が数枚と安全に帰れるようにとお守りが一つ。酔宵祭は酒の好きな神様が神社に集まって酒を飲むお祭りです。神様と言ってもお祀り《まつり》されているのでなく、今を生きる神様たちが神社に集って各地の酒をふるまいあうという事だそうです。色んな形をした神様たちはとても仲がよく
おすすめレビュー
書かれたレビューはまだありません
この小説の魅力を、あなたの言葉で伝えてみませんか?