第15話





「そこは長居しちゃダメですからね」



道中の休憩地点で連絡を入れるたび

編集者に念を押される。



「本気で連れて行かれちゃいます。

 マジですよ」


「何度も聞いたよ、判ってるよ。

 遠くから見るだけだから」







北へ北へ向かっていた。


目的地ー北の果てにある原生林。




日本中を旅しながら記事を書く

フリーランスのライターをしている。




ある朝

目覚めた瞬間に

原生林に行かなくては!』

焦燥感にも似た想いに駆られた。

荷物を取りまとめ、

自転車をぎ出した。



この瞬間まで

のことなど

全く知らなかったというのに。


なにがあるのか知らないが

行かなくてはいけない。








崖下に海を臨む

海岸沿い。

ひた走る。


北の海は

真夏でも黒く見えた。

 





荷物には

缶ビールと

木の枝を忍ばせた。








木の枝は

いつから手元にあったんだろう。

覚えていない。


文様の上から

刻んだ痕は

真新しい。


他はさておき

木の枝だけは忘れちゃいけない。

きっと特別な枝に

違いない。





原生林まで

あと少し。

自転車のペダルを踏む足にも

力が入る。





走行中。


目覚めた時に

ベッドと寝具が

全部新しかった事を思い出していた。


いつ変えたんだっけ?





まあ いいや。




時間までに

原生林に着かないと。





夕刻に掛る頃でも

真夏の日差しは

心地よい。


















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