弓裔はセカイを救済する。

　時は９世紀。朝鮮半島の大半を統一した王朝『新羅』は腐敗を極め、かつての栄華は見る影もなく、血統のみによって支配者に君臨する王族・貴族による農民の搾取が続き、その多くは既に農地を捨てて盗賊に身をやつしていた。中央集権制を強化するために導入された弥勒仏教に基づく救世主信仰も今や虚しい。西方の中華帝国もまた、安禄山の乱から１００年を経て、偉大なる大唐帝国は分裂し、天下に覇を唱える群雄たちが跋扈し、いよいよ混沌も末期的なものに至る。もはや善なる神さえも、人の世を見捨ててしまったのか――。

　しかし、ゴータマ・ブッダの法が廃れた後に新たなる正法を衆生に授けることが約束された未来仏・弥勒菩薩の化身は、既に新羅に下生していたのだ！ その名は弓裔！ 人は彼を一目大王と呼ぶ！ 兜率天にて開眼した秘技『弥勒…続きを読む