第29話 カクヨムの新たな動き
ディスコード利用の誘致や、サブスクリプションであるカクヨムネクスト。こうした次のweb小説への新たな潮流造りとして運営は矢継ぎ早に新規の動線を促してきました。
ならば今回はそれが見せる未来について私見を記してみましょう。
まず、カクヨム参加歴数か月で見えてきたものとしては、何か学校に通っていた頃のようなコミュニティ的なるものを感じました。
特に近況ノートの存在は大きく、とても楽しいものである反面、かなり個人を表出できる場でもあるためマウントをとる動きも見られたりと、日常生活レベルをことさらにひけらかすかの様なヒエラルキーの形成助長や、強者と弱者、我関せずの者、個人間のもめごと等、学校時代に遭遇した様々なコミュニティの縮図とでもいいましょうか、そうしたものもこのSNSコミュニティに感じました。
そして冒頭で述べた直近の運営が主導する動きが、本来カクヨムがやるべき次期web小説のあるべき姿について、つまり『書くと読む』を活性化させるための本質に迫っているのかについて検証したいと思います。
無論、カクヨムがWeb小説サイトを運営する目的は
・PVを回すことでのWeb広告費稼ぎ
・カク・ヨム好きを集め発行物の購入に結びつける
この2点に尽きる。だからディスコードもネクストもその点で有効と思われるが、長い目で見たときにそれが真に奏功するのかを考えて見たいと思います。
まずディスコード。このチャットルーム的なるものが果たす役割。これは学校のクラスで言えば、好きなもの同士のグループ化を助長するような作用となり、内輪的な仲がより良くなる反面、グループ外の人は参加しづらくなったり、よりヒエラルキーが強まる傾向になるかと思われます。
しかしカクヨム外部からの知り合いの目線を引き込む新たな動線ともなり得ることから、閉鎖空間に新しい風穴を開ける可能性はわずかにあるとも言えます。
そのようなルートでの新規参入はカクヨムの利用増を見込むほどにはならないでしょうが、そうしたもので内輪ウケする盛り上がりを強化することは、カクヨムからの離脱組の動きを抑止する効果があるかも知れません。
ただしカクヨム本来の魅力というよりSNS連携を強める程度になると思われます。
いずれ何かに利用価値が上がる可能性は秘めてはいても、今はカクヨムの質の改善について大した効果は見込めないでしょう。個人間トラブルも増えるかも知れません。お気を付け下さい。
そしてカクヨムネクスト。いわゆるweb小説のサブスク化。これは本来の意味では失敗に終わるかと思われますが、別の意味で面白い利用法があるかも、と思わされました。
例えばカクヨムのアクティブユーザー数はおよそ20万人とも言われていますが、仮にこの内100人に一人がこのサブスク利用をしたとして、一人の利用料金を概算で月額100円とすると、運営は月20万円、年間240万円の売上となります。
もし大きな思い違いがなければ、巨大企業の収益としたら恐ろしいほど少ない額という事になります。この事は何を意味するでしょう。私は運営が本気でこの『カクヨムでのサブスク』を目的としていないと分析してみました。
以下に理由を記してみます。
通常、例えば音楽やビデオオンデマンド配信のサブスクは再生回数などに応じた比率的山分けとなるのが一般的だと言います。
つまり先ほどの売上から運営維持費を差し引いて、残りを制作者 (作家) に分配・還元する訳です。
そうなると先ほどの還元分は、当初はおそらく数千タイトルで山分けするような場合、年間で一人平均数百円の収入になる可能性がある、といった感じでしょう。
ただ、ここでも大きな問題が立ちはだかります。
このサブスクリプションを成功させるために、すでに書店では売れなくなった旧作を魅力にして売り込んでくるはずで、当然メジャーな資産を数多く持っている彼らがそれを看板にして売り込んできます。
そうするとPVに比例分配されるならば、仮にあなたの作品がネクストに採用されようとも殆どがメジャー作品に偏ってゆくようになるのでは?と思います。
結局、今までの星の数によるランキングでの読者の偏りと同じような構造がそこに形成されると予見されます。
そして知っていましたか? 数年前から存在する下記についてを。
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総合電子書籍ストアBOOK☆WALKERは、(KADOKAWAグループが運営)110万冊以上の作品を取り扱っていて、この巨大なストアではラノベやマンガを中心に、様々なジャンルの作品が既に提供されています。
そこでは2つの読み放題サービスも提供されており、好きなだけ作品を楽しむことができます。
1. 文庫・ライトノベル読み放題で月額料金は836円(税込)で、KADOKAWAの作品を中心に1万冊以上の文庫とライトノベルが読み放題です。
2. マンガ・雑誌読み放題 同じく月額836円(税込)で、マンガ誌90誌以上と単行本3万冊以上が読み放題です。
さらに、無料で読める作品も2万冊以上あります。これには小説、文芸、実用書などが含まれており、さまざまなジャンルから選べます。
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確かにビデオ業界がほぼサブスクに席巻されたように、小説に於いてもいずれはこちらの道を主流として歩まざるを得ないとしても、これだけ無料のものを読めるラノベについては月額数百円というBOOK☆WALKERのサブスクが堅調なのかどうか。
多分それが厳しい事が分かってきたからこそカクヨムでは100円にも満たない額でやらざるを得なくなっているのかと思います。
そしてBOOK☆WALKERとの競合を抑制するためにネクストではメジャー作品は沢山は読めないでしょうし、そうなると自分の気に入った作家がたくさんあると言い切れる人以外は加入する人は多くは見込めないと思われます。
これらを思うに、web小説サブスクが紙媒体の書籍が売れなくなってゆく上での補完的な位置づけからすると絶望的な商規模しか見込めない事は運営も恐らく分かっているはずで、ならばその真意はどういう方向へ向かっているのでしょうか。
その一例として、ネクスト『掲載』の有料化―――これを考えているのかもしれません。
つまりネクストの位置づけがどちらかというとweb小説のサブスク化という点ではBOOK☆WALKERと被り過ぎている事から、やりたいのは優良な作品を安く広く読んでもらうものではなく(=BOOK☆WALKERサブスクが失敗してしまう)、別の目的――――つまりそこに掲載されることが第一線や人気の作家に肩を並べたと言えるような気風の醸成により、私たちの作家としての矜持を利用して、実はそこにお金さえ出せばあなたの作品を掲載できるようにするのでは? などと思ったりもします。
例えば功成り名を遂げた人に自費出版を促してくる幻〇舎などのように(私の勤め先などにはそうした自費出版のお誘いとかのEメールがしばしば送られてきます)、私達の承認欲求を上手くついて来るかもしれないという事です。
一定期間、自作が掲載される事にそれなりの額がかかる。例えば1か月間数百円で掲載される。すると希望者はそれなりに多く現れるかと。
そちらのビジネスのほうが余程儲かりそうでもある。多分普通にネクストを運用するより5倍くらいは稼げるのでは……と思います。
お金を出してでも掲載したいかは各人の価値観なので、仮に収支が見合わないものだとしても、閲覧される機会やネクストに掲載される事でプライドを満たせる可能性があるならコストをかける人もそれなりにいるかと思ったわけです。
すこし穿った見方でしたでしょうか。まあこれについては、もう少し様子見といったところですね。
しかしながら、今回のカクヨムの動きについては、本来の良い読み手と書き手のマッチングからはまたもや遠ざかるような結果になりかねないものであると想像してしまうのは、おそらく自分だけではないのではと思う次第です。
現在の最後尾まで読んで頂きありがとうございます。
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当創作論では何度もAI関連の話題に触れましたが、更にAIについて踏み込んだ話題にご興味ありましたら、拙作の最新ハイブリッド小説風?創作論をご紹介します。
『AIと人生をチョット共にしてみた件 ~ もしカクヨムで仮想女子AIマネージャーがドランカーのマネジメントをしたら』
https://kakuyomu.jp/works/16818023213212553644
イラストだけでなく小説にまでAIを持ち込むな! と考えているあなた。ある意味正しくて、ある意味で古すぎるかも知れません。
なぜならイラストに比べ小説でのAI活用は、お手伝いや手抜き対象と言うよりも、あなたの頭の加速装置と言える物だからです。
それを時に風刺的に、時に面白おかしく、私生活を覗いた潜入ルポ小説風にまとめた奇作となっています。
そこでは使い方を何も教えていないのですが、読んだあと『そっか、ああやって使おう』と感じれている事に気付く筈です。
気軽に楽しくAIを小説に活用したい方にオススメです。
https://kakuyomu.jp/works/16818023213212553644
ラノベを若者が読まなくなった本当の理由と そんな世界で生きる私達にできる事 ~内容が薄いからとは言えない真の原因 深宙 啓 (Kei misora) @kei-star
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