別エンディング。
《で、見事に絆されてくれて助かりました》
俺が手に入れた毒薬はクロウによってすり替えられており、俺は動かない体のまま、マリー様の独白を聞く事に。
その事すらもマリー様には内密に、俺は奇跡によって回復した、と。
「どうして分かった」
《何でか分かりませんが、嫌な気配がしたと言うか、見た事が有る様な雰囲気でしたので、見張らせていたんです》
「前世の記憶か」
《あー、何かしらの勘が働く場合、そうなのかも知れませんね》
クロウには前世の記憶が有るのか無いのか、そして王も王妃も有るのか無いのか。
若しくは、俺の様に途中から思い出したのか、前世の記憶が無いままか。
兎に角、王妃様も王もクロウも、俺達の結婚を祝福してくれた。
「あぁ、そうなのかも知れないな、お兄様」
《凄い違和感なので止めて下さい、今まで通りクロウでお願いしますよアッシュ》
「考えておく」
《嫌ですね本当、すっかり丸くなって冗談を言う様になってしまって》
「マリーにゴリゴリと角を削り落とされたからな」
《あぁ、愚痴を言っていたと告発しておきますね》
「俺が居なくなっても良いならな」
《それは困ります、護衛対象を2人も失ってしまったら、僕の首まで失ってしまうので》
「正解に言うなら、失うのは頭だがな」
《細かいですね本当、やっぱり言ってしまいましょうかね》
『あらクロウ、私に何を教えてくれるのかしら?』
《あー、いや、惚気てらっしゃったと、では失礼致しますね》
相変わらずと言えば相変わらずだが、アイツも何処かで1度は記憶を取り戻していたのかも知れない。
それこそ何度か前の、王妃の様に。
『それで、何を言ってたの?』
「丸くなったと言われ、マリーのお陰だ、と」
『どうせゴリゴリと削り落とされたとでも言ったのでしょう?』
「あぁ」
『そうやって心を削り落とされたから、よね、ごめんなさい』
「いや、もうお前が食って生き続けてくれるなら、それで良い」
『嫌味を言える様になったのね』
「あぁ、コレもマリーのお陰だな」
『ごめんなさい』
「いや、もう済んだ事だ、全て」
『他所見をしないでくれるなら、絶対にしないわ、もう2度と』
「最初から、しているつもりは無かったんだがな」
『けど愛してくれなかった』
「俺なりの愛、だったんだが」
『そうなのよね、なのに私は我儘だった。やっぱりダメなのよ、最初からしっかり王族教育を受けないとダメなのよ、愚か過ぎだった、ごめんなさい』
「今はもう十分に賢いと」
『どんなに海へ真水を入れても、飲める様にはならないでしょ、それと同じよ。愛も、薄まらない、全く』
「すまない」
『いえ、私こそ、ごめんなさい』
マリーはまだ、俺の気持ちを、情愛を疑っている。
ちゃんと生きるから、いつ別れても良い、と。
「愛してる」
『本当に?本当に夫婦として?』
「本当に愛してる」
殺した者、殺された者。
そして餓死した者、その姿を見てしまった者としても、互いに事を成すのは難しいと思っていたが。
彼女は豊かな体を持つ女性となり、成せてしまった。
だが、心が無くとも成せてしまう。
その事を互いに知るからこそ、未だにマリーは不安を感じている。
『嫌な所はちゃんと言ってね、お願い』
「責任感からでも、死にたくないからでも無い、愛してる」
愛しているけれど、もし次が有るなら。
俺は先ず、自らの目を潰そう。
コレが本当にマリーの幸せなのかどうかは、未だに分からないのだから。
何転ー何度転生してもー 中谷 獏天 @2384645
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