痛みを知ること、小説を書くこと
- ★★★ Excellent!!!
目に浮かぶような情景描写、移ろう感情の解像度の高さ、物語の展開、全てにおいてクオリティが高く非常に感服しました。
主人公たちが成長していく過程や感情の変化、葛藤が明快な文章で綴られていて、一気に最後まで読みふけってしまいました。
(↓以下、少しだけ自分語りをします。すみません…)
私自身、人前に立ったり緊張したときなどに、過呼吸と吃音が混ざったような症状が出ることがあります。刺さる視線の怖さ、喉が絞まる感覚、消えたくなるような痛みを、読んでいるうちに思い出してしまいました。それでも読み終わった後には、優しく希望に満ちた何かが私を包み込んでくれました。
思えば自分は普通じゃなくて、弱くて人より劣っていて、その代わり心の深度があって、だから小説を書き始めたのかもしれないです。美しい文章を追っているうちに自分と蒼を重ね合わせてしまい、こんなことをレビューに書いてしまいました。申し訳ありません。
『人を救う小説は同じ痛みを持っている人にしか書けない』、その言葉には何度も頷きました。作者さんは人の痛みを知っているからこそこの物語を書けたのだろうな、きっと強く優しい人なのだろうなと、蒼と同じ感情を抱かずにはいられませんでした。
小説の持つ力は微量かもしれないけれど、偶然手にとった小説に、誰かの書いた文章に、人生を救われることだって確かにあります。
蒼が彗の小説に救われたように、私もこの小説に救われました。この物語はこれから、多くの人の心に届くのだと思います。
人の痛みを知ること、小説を書くこと、大切な想いを伝えること。多くのことを、この素敵な物語を通して受け取りました。
この小説に出逢うことができ本当に幸せです。長文すみませんでした。