第4話 業《ゴウ》の章
「これは……なんだ……?」
「これは父の地元に関する記事だ。日付は昭和三十八年。当時のアメリカ大統領が暗殺された年の新聞だね。ああそれとこの記事は本物だ。当時はかなり騒がれたみたいだけど、結局は誰がやったかなどの証拠は出ず、有耶無耶のまま人々の記憶から消えていった」
「だめだ……全然理解出来ない……。それとさっきの夢の話がどう関わるんだ……?」
「あの昔話にヒントは隠されている。まあとりあえずは僕の話を聞いて貰おうかな。雪人も色々と質問はあるだろうけど、今は黙って僕の話を聞いてくれ」
そう言って
「その新聞記事を見た瞬間、僕は
父は嘘を
父の地元では過去、法を逸脱した儀式が行われていた。
父は伝承や儀式を嫌悪し、実家と疎遠になっていた。
だが父は祖父のことは信頼していた。
祖父は僕が生まれる前に他界している。
僕は生まれた時から原因不明の病魔に侵されていた。
僕はあの日、祖母の家に行った。
あの昔話の村は父の地元であり、鳥居も神社もあった。
もちろん
あの老人は実在の人物だ。
この眼鏡はあの老人の眼鏡だ。
そこまで言うと
「え? ちょっと待てちょっと待て……
「いい反応だね。この夢──昔話は、実際に起きたことだ。
「僕の父の地元は古くから
「だが本来であれば僕が穢れによって災いを被ることは無かったはずなんだ。何故なら……
そう言って真実のみで構成された言霊が淡々と紡がれる。
終わったはずの災いを被った僕をなんとかしようと、父は疎遠になっていた祖母を頼った。
祖母は儀式の再現を提案した。
儀式は夏祭りの時期に行われる。
夏休み、父は僕を連れて地元を訪れた。
可能な限り儀式を再現するため、祖母は方々から人を集めて人が密集した。
祖母は信頼出来る複数人に
異様な雰囲気を察したのか、僕が逃げ出して迷子になった。
鳥居を指差した人は集まった中でも詳しく事情を知る者達であり、「あっちだよ」と教えてくれていた。
境内の中に誰もいなかったのは、ちょうど
宙に浮く般若の顔は、黒衣に般若の面という儀式用の格好をした村人だ。
僕を巫女の舞が見える鳥居の前まで連れて行ったのは老人ではなく、般若の面を被った村人だ。
舞の説明をしたのも般若の面の村人であり、よく見えるようにオペラグラスのような道具を使用した。
その後
儀式の再現には家畜の体や内蔵、血液を使用して可能な限り忠実に行った。
最終的に僕は気を失い、その間に東京まで戻ってきた。
「……とまあこんな感じだね」
「信じられないけど……本当にあったこと……なんだな……?」
「ここまで話して分かったとは思うが……
「祖母の家に行った際に祖父の写真を見たので間違いない。この眼鏡は祖父の遺品であり、父がお守りにと持って帰ってきたんだ。それで中々目を覚まさない僕に願掛けのように握らせた。それと合わせ、父は僕に嘘を
「い、いや……ちょっと僕には理解が……え……? なんだ……? 死んだおじいちゃんが……? え……? つまり死んだおじいちゃんが
「ごめん
「まあ普通はそうだろうね。だけど僕はこの一件から、知らないことがあることが怖くなったんだ。可能な限り論理的に物事を考え、可能な限り非論理を排除する。そうすることで、確実に存在する
再び眼鏡をかちゃりと上げた
柔らかい笑顔を見せた。
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最後まで目を通して頂き、誠にありがとうございます。この鷹臣と雪人なのですが、【赤黒い渦】や【伽藍の悪魔】など、他のホラー作品にも登場しております。併せてお楽しみ頂けましたら幸いです。
鋏池穏美
人鬼の住まふ咎の里 鋏池 穏美 @tukaike
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