第60話 ラダンifストーリー3
「ラダン、よくやった。さすが我が息子」
「父上、私はすぐにでもシャロアを迎えに行きます」
「あぁ。エレゲン伯爵にも伝えてある。彼女は今、王都で療養を兼ねて観光しているようだぞ」
「ありがとうございます。母上、行ってまいります」
「気を付けて行くのですよ? シャロアちゃんを我が家に連れて帰ってくるのですよ」
俺は王女の嫁ぎ先が決定したのを確認てから最低限の用意で飛び出す様に隣国へ出国した。
馬車でゆっくりと進むなら隣国へ三日程度かかるだろうが、愛馬に乗りで出てきた俺は一日半ほどで隣国へと着いく。
その後は馬の疲労もあるためゆっくりと進み隣国の王都には三日程で到着した。
……シャロアはどこにいるのだろうか。
俺は宿という宿に聞き込みを開始する。三軒目にしてようやくエレゲン家が泊っていることを確認し、ホッと息を吐く。
「君はエレゲン家の侍女だね? シャロアは今何処にいるんだい?」
エレゲン家の侍女は受付に何かを聞こうとしているようだった。
「!! リンデル侯爵子息様!? えっと、シャロア様はクローディア様と現在時計塔で観光をしております」
「時計塔か。有難う。すぐ向かうよ」
俺は侍女にシャロアのいる場所を聞くと、旅の疲れなんて忘れ、踵を返すように宿を出て時計塔向かった。
シャロアに会いたい。
今すぐ抱きしめたい。
今度こそもう離さないと誓う。
俺は時計塔を目指して歩く。いや気持ちと共に気づけば走って彼女を探していた。
「お母様、ここが時計塔なのですね。とても大きな建物なんですね。中に入れないのが残念「シャロア!」」
視界に捉えた彼女。思わず駆け寄り呼んでいた。
いつぶりだろう、こんなにも胸が高鳴る想い。
彼女は俺の事を忘れてはいないだろうか、強い気持ちと同時に不安と心配が入り混じる。
「……ラダンさ、ま……?」
「シャロア!」
「ラダン様!!」
彼女は俺がそれ以上いう前に涙を流し抱きついてきた。
「シャロア、待たせた。迎えに来た。一緒に帰ろう」
「ほ、んとう? 本当?」
震えながら確認するように聞いてきたシャロア。あぁ、こんなにも彼女を不安にさせてしまった。
「もう大丈夫だ。帰ろう」
「うわぁぁぁぁん。不安だった。これからずっと一人で生きていこうと思っていたの。それでも、ずっと待っていた、待っていたかった」
堰を切ったように抱きつき涙を流すシャロア。俺にはギュッと抱きしめるしか出来なかった。
「すまなかった。でも、待っていてくれて有難う。王女の事は方が付いた。もう何も心配は要らない」
俺はシャロアが落ち着くまで待ち、夫人とシャロアと一緒に宿に戻った。
「クローディア夫人、お待たせして申し訳ありません。全て終わりました」
「そう、良かったわ。これで私達も安心して国に帰れるのね。急がないとボルボアが泣いているわね。明日には家に戻りましょう」
「お母様、心配をお掛けして申し訳ありませんでした」
「何言っているのよ。全ては王女のわがままを許した陛下のせい。貴方達は振り回されただけだわ。まだまだ王宮は荒れているでしょうからボルボアのためにも早く帰らないとね」
そうして私達はすぐに帰宅の途に着いた。
結局、会議は荒れに荒れて陛下は隠居という名の幽閉となり、エレゲン伯爵は爵位を息子のジルドさんに譲り、ジルドさんが新たに伯爵となった。
王女はというと、男爵家へ結婚式無しで大金を持って嫁ぐ事になった。ゴダン男爵は王女の持参したお金をもとに更なる商会の拡大を行った。
彼女は最初こそ大人しくしていたが、元来の身持ちの悪さが出てしまい一年もすれば我儘と男遊びに耽るようになった。
もちろんそれを許すゴダンではない。彼女に薬を服用させ、動けない状態にし、病気療養として別邸と呼ばれる山の中に押し込んだようだ。
その後の彼女の安否は分かっていない。
会合が紛糾した後、貴族達と多くの溝を作ってしまった王太子と王妃は休む暇なく動きまわり頑張っているようだ。
俺はずっと休暇を貰っている状態だったのでシャロアと改めて婚約を結びなおした後、仕事に復帰した。
取り消しになった結婚式は再度半年後に決まり、俺は結婚を機に騎士団を辞めることになった。もちろん騎士を辞めることに後悔はない。
シャロアは今、エレゲン伯爵邸から通いで婦人教育を受けなおしている。
「ラダン様、お帰りなさい。今日は早かったのですね」
「シャロア、ただいま。あぁ、引継ぎも終わってすることが無いからな。シャロアとの時間を作ってやれって五月蠅いんだ」
「ふふっ。みんな優しいですね」
「あぁ、そうだな。そうだ、今度の休みは一緒に『ボルボード』に行かないか? 新メニューが出たらしいんだ」
「本当ですか? あそこのお店は美味しいから嬉しい。ラダン様と一緒に行くのも楽しみです」
「あぁ、俺もシャロアと一緒に行くのを楽しみにしているよ」
シャロアのはにかむ笑顔に俺も笑顔になる。
あぁ、俺は幸せを噛みしめる。
もう決してこの幸せを手放す事はないと誓える。
【完】
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【完結】婚約破棄された女騎士には溺愛が待っていた。 まるねこ @yukiseri
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